桜花賞馬、最後の砦。

　トライアンフマーチが引退した。さして話題にもならず記事も書かれない。引退後は乗馬となる予定だそうだ。デビュー前から、これは種牡馬になる馬だと思って応援してきた身としては、この幕引きは寂しい限りである。
　母・キョウエイマーチが好きだった。この桜花賞馬とダービー馬の父との組み合わせ。良血には違いないが、とりたてて言うほどのそれではないのだろう。父・スペシャルウィークの産駒に牡馬の活躍馬が少ないのも、あるいは災いしたのかもしれない。トライアンフマーチは二度目の屈腱炎を発症したことが分かると、あっさりと引退が決まったようだ。
　ギャンブル性のあるスポーツはいくつもあるが、やがて出てくる子供を応援する愉しみのあるのは競馬だけだ。気性の悪い下級条件馬のように、カリカリしながら応援したいのだ。
　競馬に「タラレバ」は禁物という。しかしそれは、競馬周辺で食ってる人のこと。僕らファンは、「タラ」も「レバ」も連発しながら、悔しがるしかないんだから。もしあの皐月賞で届いていたら・・・、安田記念でまともにやれていたら・・・、いや、たったひとつの重賞タイトルがあれば・・・、血を残せたのかもしれない。
　悔しいけれど、いまはこれからの馬生が幸せであれと願う。
　キョウエイマーチの残された産駒は、半弟のインペリアルマーチだけになった。キョウエイマーチの最期の砦だ。ダートで圧勝を見せた母に似ている。