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2017/03/07 12:47

脚部不安と馬場について

脚元に不安のあるサンラファエルのデビューと、シャイニングレイが屈腱炎からの復帰戦がともにダート戦となった。サンラファエルはやはりレース後に痛みが出てレントゲンの結果骨折はないものの、数ヶ月の休養が必要とのこと。
これに関して、私が馬に関わっていたのはもう12年も前の話だけど、その時までに仕入れた知識をちょっと想い出しながら書いてみたい。

当時調べたデータでは、競馬のふるさとイギリス(含アイルランド)に比べて、日本の競走馬の故障は圧倒的に多かった。
こう書くと、日本競馬の馬場や調教が遅れているからだとすぐに思ってしまうのだけれど、実はそうではない。

生産される競走馬中で、デビューできる割合では日本の方が圧倒的に多い。日本では7割近くが出走までこぎ着けるが、イギリスでは5割以下という数字である。
これは何を意味しているかと云えば、故障を発症しそうな馬がイギリスでは早い段階で淘汰されているということである。

日本の競馬は古くは軍馬の確保と維持、現在では馬産地の保護を主題としているので、効率よく生産されて、多くをデビューさせるのは理にかなっている。
しかし、そのしわ寄せが馬主に及ぶことになるので、JRA施設内での疾病・事故に対しては手厚い保障が与えられる構造になっている。
トレセンでの骨折、脱臼などの疾病の発症は暖期に少なく、寒期に多い(屈腱炎は逆かも)。
脚部故障(率で)は馬齢に反比例して減ってゆくが、これは元々不安がある馬が、若い内に淘汰されてゆくからであろう。
ただし指骨と種子骨に関しては馬齢に比例して増えてゆく。これは指骨と種子骨が構造的に消耗品的な部位で、疲労の蓄積が一定量を超えると破損するという性質を持っているからと思う。

また古いデータで申し訳ないが、芝とダートの骨折・脱臼・屈腱炎に関しても触れておきたい。
一般認識としては芝よりもダートの方が脚元に優しいと考えられている。
しかし冷徹な数字のみで見れば、実はダートでの事故率の方が高いのである。芝の馬場はここ30年ほどで見違えるほどクッション性が改良されており、もし馬場の硬さと事故率が比例しているならば、古いデータほど芝での故障が多くなければおかしい。
馬場が改善された現在はもっと芝での故障が減っていると考えるならば、脚元に不安がある馬を安易にダートに出走させるということが本当に正しいのかは、もっと精査が必要では無かろうか。

ただし元々脚元が弱い馬が、多くダートに出走するために、故障率を上げていることも考えられるが、これもどれくらい脚元が弱い馬が含まれているかという率を把握できなければ即断はできない。
部位で云えば中足骨骨折、足根骨骨折、脱臼に関してはダートの方が事故率が低いが、それ以外の骨折、屈腱炎はダートの方が事故率が高い。

このあたりの芝・ダートの危険度の認識は調教師さんの経験的感覚に拠ってしまっている。またファンの多くも同じ感覚でいると思う。
突き詰めれば不安の部位によって芝かダートかの選択を考えなければならないのではと考える。
不安部位によってはダートよりも芝の方が負担が少ないということもあり得るのである。しかし、現状はどうもそこまで競走馬の脚元の病理に関しては煮詰めきれていないのではと感じるのである。
(データに関しては『競走馬保健衛生年報』に拠っています)

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