19件のひとこと日記があります。
2011/12/20 19:43
【回顧録】1994年中山大障害(秋)?Vol.1
かつて競馬好きの作家として有名だった寺山修司。
彼は哲学的な言葉を残す人間として、名を馳せていた。
「競馬ファンは馬券を買わない。“自分”を買うのだ」
数ある彼の競馬の格言のなかで、僕が最も感銘を受けたのがこの言葉だ。
休みの日、命の次に大事とされるお金を使って馬券を買うのだから
一人ひとり、それぞれが持っている信念に沿って予想するのだと思う。
以前もどこかで書いたけれど、だから僕は人気薄の馬を好んで買う。
なぜなら、仕事も遊びも多くの人から“期待されていない”自分と似ている
人気の無い馬にシンパシーを感じて、ついついお金を使ってしまうのだ。
人気の有無ではなく、サラブレッドの脚質での好き嫌いも分かれる。
長く競馬のキャリアを積み上げた人ならば、逃げ馬が好きな人も居れば
<大逆転の醍醐味>を味わえる追込み馬に心を奪われる人も居る。
僕は逃げ馬が大好きだ。
今までの僕は、集団の先頭に立って“逃げる”ような人生を
送れなかった。
常に馬群の後方をトボトボと、何とか離されないように
走るのが精一杯な生き方しか出来なかった。
だからだろうか、僕は常に馬群の先頭に立って走る逃げ馬が好きだ。
先の寺山修司の言葉とは逆だけれど、自分に無いものに憧れて馬券を買うこともある。
自分が出来なかったことを馬に託して夢を見たことは、何度もある。
けれど、だいたいその夢は打ち砕かれる回数の方が多いのだけれど。
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そんな逃げ馬好きの僕ですら、追込み馬の走りに驚かされたレースがある。
1994年の中山大障害(秋)だ。
この年の障害界を牽引したのは、ブロードマインドという馬だった。
オープンまで進んだ平地力もさることながら、抜群の飛越能力を備えた
この馬は、93年秋→94年春と中山大障害を勝っており、ここを勝てば
【中山大障害、3連覇】という偉業を成し遂げることになっていた。
そんなブロードマインドは、この94年の中山大障害(秋)では
単勝1.5倍という圧倒的な支持を受けての出走だった。
2番人気には関西からの刺客、タイヤン。
障害転向後は5戦負けなし。前走の京都大障害(秋)も後続に影も踏ませぬ
大逃走劇を演じての勝利を見せて、暮れの中山大障害に乗り込んできた。
3番人気はユーワハッピーが推された。
障害戦で初勝利を収めるまでに3戦を要したが、2連勝という勢いも買われ
単勝オッズは10倍を切るほどの支持を集めていた。
馬券の対象になるのは、上記3頭というのが大方の予想だった。
それ以外の5頭は“その他大勢”という扱いで、8頭による
この年の中山大障害のゲートが開いた。