8件のひとこと日記があります。
2019/08/10 16:54
シャルさんと父アローの想い出〔4〕
一方のタニノムーティエ、春先の無理が祟ったのか、
本来ならリフレッシュするはずだった夏の放牧中に喘鳴症を発症。
本番の菊花賞前の2戦では、いづれも直線で呼吸困難に喘ぐことになった。
それでも奇跡を信じ、3冠をかけて菊花賞に挑戦を表明。まさに悲愴だった。
レース、
それでも最後の力を振り絞って、
3コーナーから捲りに出て4コーナーで一気に先頭集団に取りついた時、
奇跡を願っていた多くのファンの大歓声と、
興奮した実況放送に身震いがしたことを、今でも忘れない。
しかし、病に犯されていたムーティエの肉体は、既に限界を超えていた。
奇跡は起こらなかった。
苦しそうに首を上げ後方に消えていくムーティエ。
そのまま競争生活に終止符を打った。
アローは、5歳秋スプリンターズステークスに4歳の有馬記念以来、久々に出走。
だがそこには、ムーティエに挑んだ4歳春の面影はなかった。
再度脚部不安を発症し、引退に追い込まれた。
・・・・
ブルルルッ、ハマキヨが鼻を鳴らした。
びっくりして我に返る私。
そんな人間の色々な思惑など、自分には全く関係ない、とでも言わんばかりに、
又、ブルッと鼻を鳴らしながらハマキヨはお構いなしに草をはみ続けている。
それがやけに微笑ましく、心が和んだ。
標高千メートル付近にあるこの牧場も、
梅雨も後半に差し掛かかった今、蒸し暑さを感じざるを得ない。
馬房から外に出されたハマキヨは、
ほぼ毎日のんびりと牧場内の道際に生えている草を食んでいるようである。
背もそれ程落ち込んではおらず、あばら骨もわずかに浮き出ている程度。
とても37歳とは思えない。
競走馬時代は、主に地方の大井競馬場で走り62戦2勝、と聞く。
全く無名の馬である。
「良く生きていたね」・・・
競走馬の宿命として、この戦績では生き抜くこと自体が難しい環境に加え、
本来の寿命をも大幅に超えて生き抜いているハマキヨに、
私は驚きと深い愛情を感じ、関係された皆様のご苦労にも感謝した。
〔5〕へ続く
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タニノムーティエのオーナーが、周りの反対を押し切り、自分の牧場で夏場を過ごさせ…心配した関係者が見に行くと「雨が降る寒い中、屋根のない場所で裸足で立っていた」というのを
昔、本で読んだ事がありました。馬の運命はオーナー次第であるというのを痛切に感じます。 -
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