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2019/07/30 22:27

雑感:ディープインパクトの急死について

まず、ディープインパクト号のご冥福を謹んでお祈り申し上げます。

突然の知らせにびっくりした方がほとんどだろう。
自分のその一人。
競馬に興味を持ち始めたのがディープインパクトの現役引退の後なので
その当時の活躍や熱狂はほとんどわからないのだが
そんな自分でさえ名前や偉業は知っている。
間違いなく歴史にその名を刻んだ競走馬だった。

頸椎の骨折により回復の目途が立たないことから、安楽死の処分。
数か月前から頸部に異常が見られ、数日前の手術はその部分に行われたそう。
しかし手術の翌日には起立不能の状態になっていたというから
今回の件はやはり手術になんらかの原因があったであろうことは否めない気がする。

だが「手術は失敗した」とか、担当した執刀医を責めるつもりはない。
他方「種付のやり過ぎ」を指摘する意見もあり、
その辺も考えなくてはならない点だと思うが、
どうしても思い入れや怒りや悲しみがあるから非難の声が出てくる部分もある。
手術をしたからといってその全てが成功するわけではない。
これだけの馬、最高のスタッフで最善の方法を用いて対処してのこの結果なのだ。

個人的な意見を言えば、
ディープインパクトはあまりにも「完成され過ぎていた」のではないかということ。
競馬関係者が言うにはディープインパクトは、
体の各パーツのつなぎがスムーズで、奇跡的な骨格のつくりをしていたのだそうだ。
さらに走ることが大好きな馬だったという。
それゆえに「飛んでいる」ようだ謳われたあの驚異的な末脚と、
無敗の3歳クラシック三冠をはじめとする輝かしい競争成績に繋がった。
ディープインパクトは「完璧な芸術品」だったのだ。

「完璧な芸術品」だったからこそ、
いったん小さなほころびが生じるとそれが大きなリスクになるのではないか。

ある有名なミュージシャンがいて、仮にAという名前とする。
このAが別のミュージシャンの曲のリミックスを依頼されたとき、
結果そのリミックスは発売されることになったがAはすこし不満が残ったという。
音楽雑誌の記事でそのことについて答えていた。
「完璧な曲を崩してもさらにいい曲にはならない」
「いい曲は何もしないほうがいい」
ディープインパクトも同じだったのではないだろうか。

芸術品というのは非常にデリケートだ。
常に温度や湿度の管理を徹底しなければならないし、
日本で展覧会があるときなど、
海外から運ばれてくる作品は厳重にパッケージされて細心の注意を払って輸送される。
修復しなければならないときは優秀な修繕士をそろえて慎重に作業を行う。
現在ではどの部分にどの色を使って…など、
その際の判断にコンピュータも導入されているところもあるそうだ。
ディープインパクトは奇跡的な骨格のつくりをしていた。
「完璧な芸術品」だった。
「完璧な芸術品」だったからこそ、そのデリケートな体にメスを入れることが
かえってディープインパクトの馬体には悪かった。
綺麗に並べた積み木も、その一部分を抜き取ればあっという間に崩れてしまう。
奇跡的な骨格のつくりだったからこそ、ある一部分をいじってしまったがゆえに
小さなズレがめぐりめぐって大きなズレになってしまった。
治すつもりが逆にそれがもとで頸椎の骨折に繋がってしまった…のではないか。

あくまで個人の意見というか想像の話なのでこれが事実ではないが、
そんなふうに思ってしまった。
何度も言うが、担当した執刀医を責めるつもりは全くない。
ただ不運だったのはあまりも完璧すぎる芸術品だったことなのではないかな、と。
ディープインパクトは享年17才だったが、父親のサンデーサイレンスも16年の生涯だった。
もともと頸部の異常の直接的な原因が何であるかはわからないままの手術だったし、
血統的な背景か、名馬たるゆえの宿命か、
結局は何もしなくてもこれくらいの年月が天寿だったような気もする。

いずれはそういうことになるとはわかっていても、
その時が訪れるとやはり寂しいものである。
今回の件について考えることや見直される点はあるにしても、
それとはまた別に、
いまはただこの歴史的名馬に想いを馳せることのみが正しいように感じる。

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