天栄の誤算。〈その２〉

　この日記は長文を２つに書き分けてあります。
　出来ましたらどうぞ〈その１〉からお読み頂ければと。

　さて、皆さまはレースにおけるグループ戦略・チーム
　戦略についてはどのようなお考えをお持ちになられて
　おられますでしょう。これについては様々なお立場や
　視点から多様なお考えが存在していると思いますし、
　当然、現行の競馬法規を厳密に遵守するとすれば、
　各レースにはあくまで１頭１頭独立した勝負(勝利を
　目指すこと)が求められていると理解をしております。

　ただ現実的に、ここ数年の凱旋門賞を見る限りチーム
　戦略なしに世界で通用しないことは明らかではありま
　すし、昨年のベストバウトならぬベストレースと感じ
　ている菊花賞の無敗３冠馬コントレイル号vsアリスト
　テレス号・ヴァルコス号〈チーム・アドマイヤ〉との
　スリリングな戦いを見ても、またこの先ＪＲＡさんの
　国際戦略上の大きな目標、日本馬による凱旋門賞戴冠
　を考えていくと、方向性としてある程度のチーム戦略
　は許容されていくのではないか、と考えています。

　さてその前提を持ちながら、昨日のフェアリーＳを
　見ていくと、薄っすらとNF天栄さんとしてのチーム
　戦略が見えてくるだろうと思います。

　最初に、あくまで私見、あるいは想像であることを
　お断りしておきますが、
　チーム天栄では、枠順発表時点以前に前述シルクさん
　所属の３頭と、個人所有の２頭ファインルージュ号・
　ホウオウイクセル号を合わせた５頭で上位を独占する、
　馬主単位の入厩頭数制限により自由なスケジュールの
　組み立てにくいクラブ馬に、ここで賞金加算をさせる
　という２つの目標を持っていたのではと思えます。

　ところが枠順発表を確認すると、先行馬なら有利な
　最内枠に、よりによって中団差し〜追い込みで能力を
　発揮するベッラノーヴァ号が入ってしまいます。
　これには本当に頭を抱えたでしょうね。

　状況打開のために建てた善後策は、クールキャット号
　カラパタール号で隊列を少し前に引っ張ることで、
　ベッラノーヴァ号が外へ持ち出しやすい環境をつくる
　と同時にそのクールキャット号も掲示板やそれ以上を
　目指すという戦法。エース騎乗のファインルージュ号は、
　有力な個人馬主でもあるので、ここには関与させず
　そのまま単騎で優勝を目指すことにしたのではないで
　しょうかね。

　実際にパトロールＶを見てみると、スタート後、
　ベッラ騎乗の丸山Ｊは外の同じ勝負服津村Ｊの出方を
　窺っているのが見て取れます。

　ここで枠順に続く２つ目の誤算が生じます。
　勝負気配のやや低めのカラパタール号騎乗の横山武Ｊ
　は、乗り替わりの今回、指示通りの先行はしますが、
　無理をして隊列を引っ張るまでの逃げはせず、さらに
　テンのスピードが不足気味のクールキャット号は、
　ひと呼吸遅れ気味のスタートから前へは行けず、最後方
　までズルズル後退。当然、ベッラより後ろの位置に。
　津村Ｊは体勢が整って後、当初の指示通り隊列の前へ
　取り付こうとしますが、坂の下りでの加速の為、意図
　した以上の速いラップを、覚悟しながら進んでいます。

　３つ目の誤算は、レース前に危惧された通りベッラは
　掛かり気味に進んだため、必要以上に丸山Ｊはベッラを
　抑えざるを得ない状況に。経験豊富で対処のひきだしを
　たくさん持っている方ではないので、上手に馬をなだめ
　ながら下げつつ、出し引きしながら馬の隙間を縫って
　ポジションを確保する芸当は出来なかったようですね。
　28秒〜29秒あたりで勝ち馬の斜め後ろに付けたり、
　48秒の段階で前に行かせた３の外へ持ち出せていた
　なら、それでも十分２着はあったように感じます。

　もちろん最初に書いた通り、これらは全て想像でしか
　ありませんし、それぞれのお立場でのご意見があるの
　は理解出来ますから仕方のないことだとも思いますが、
　今回のレースの件で津村Ｊのみ執拗に責められている
　のを見ると、どなたか別のお立場の方が前に出て来て、
　彼を少しばかり擁護すべきではないのかなぁと感じて
　しまいます。

　と同時に、わたしも皆様方と同様、現今の関東圏の
　中堅〜ベテラン騎手たちの不甲斐なさを感じてもいます
　ので、どこか心中では、モレイラＪやマーフィーＪが
　いてくれたならなぁと思ってしまいますけどね。
　
　内容が内容ですので、この記事へのコメントは不可と
　させて頂いております。悪しからずご海容願います。