競輪
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2014/09/25 22:34
惜敗の師 二ノ宮師編��
99年春。まだ雪の残る、寒い日だった。
シャルル・ドゴール空港の検疫所に入ったエルコンドルパサーの馬房の前で、二ノ宮師はスタッフとこんな話をしたという。
「ひょっとしたら1回使っただけで帰ることになるかもしれない。だけどとにかく、みんなで力を合わせて頑張ってみよう」
準備は重ねてきた。装蹄師や獣医師、通訳も含めた26人のチームを結成し、調教計画を立て、カイバと水もコンテナいっぱいに積み込んだ。自身は十数回のフランスの他、あらゆる可能性を考えてドイツ、英国、米国にまで渡航。90年の厩舎開業から勉強のため海外へ赴き、セリや種馬を見て回る中で培った経験が土台になった。計画が思惑通りに運ぶ保証はない。不安を打ち消す唯一の方法は、日々最善を尽くすことだけだった。渡仏当初、エルコンドルは現地の馬場に戸惑った。「全然、前に進んでいかないんだよ。蹄跡を見たらガボッと掘れていて、これは大変だと思った」しかし腰を据えて調教を進めるうちに順応していく。2カ月もするとスムーズに歩けるようになり、体形も変貌。初戦のイスパーン賞の直前にはシャンティイ競馬場を借り切って、コーナーごとに帯同馬を待たせ、リレーのような併せ馬を行った。「全部で4戦だけど、10戦したくらいの負荷がかかったはず」と振り返る。約半年間を攻め抜いた結果、凱旋門賞でエルコンドルは、地元紙が「今年は2頭のチャンピオンが存在した」と形容するほどの走りを見せる。歴史的偉業。しかし同師に喜びの色は薄かった。「凱旋門賞は世界最高のレースだから、強い負荷をかけなければ勝てないという意識があった。でも、それじゃ駄目だったんだ」届かなかった。2着惜敗という現実を、正面から受け止めていた。(つづく)
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