『表紙の人 騎手 藤田菜七子』 AERA '16.9.12 No.39

「プレッシャーや嫌なことは、一晩寝たら忘れちゃいます」

『菜七子フィーバー』にも本人はいたって冷静。騎乗回数は200回を超えたが、

「全然ダメ。点数がつけられないくらいひどい。まだまだ目指すところがあるので」

小学生のときにテレビで見たジョッキーに憧れた。馬に乗りたいと言うと、母は美浦トレーニングセンターの乗馬苑に通わせてくれた。中学卒業後、競馬学校へ。

「フィジカルトレーニングではみんなができるのに私にはできないことがあって悔しかった。馬から落ちたときも、コノヤロー、次は落ちないぞ、って」

あどけなさの残る表情とは対象的に、負けず嫌いなのだ。普段は美浦の寮で暮らす。平日は4時起き、土日は2時半起きだ。オフは月曜日だけ。

「寮では本を読んで過ごすことが多いです。毎日外にいるので、休みの日ぐらい外に出たくないっていうのもある（笑）」

よく読むのは有川浩や東野圭吾。伊坂幸太郎作品に登場する『未来は神様のレシピで決まる』というフレーズが好きだ。競馬も、神様のレシピ？

「同じジョッキーでもう一度レースをしてもまた同じ馬が勝つとは限りません。枠順とか天気、馬場の状態もある。人の努力、馬の努力もあるけど、最終的には運もあるのかなって」

だからこそ『他の何にも代えられない勝利のうれしさ』を実感している。