245件のひとこと日記があります。
2015/02/27 22:17
後藤騎手
2009年の1月を思い出す。
私は、土曜日にTさんと一緒に仕事をするハズだった。
金曜日に「Tさん、土曜日よろしく!」
そう言って、別れた。
土曜日。
待ち合わせの時間になってもTさんが来ない。
私は何度も電話した。でも、電話は鳴るものの、Tさんは出ない。
「Tさん、酒好きだから金曜日に深酒して眠り込んでいるのかな?仕方がない。一人で仕事しよう」
そう思って、その日は一人で仕事をこなした。
3連休が明けて、火曜日。土曜日の嫌味でも言おうと思って、Tさんのいる部署に行った。
…Tさんが、いない。
部署の人に聞くと「電話は鳴るけど、何度かけても出ない」状態。その日は外出の予定も入っておらず、普通に出社する予定だった。
「おかしい、おかしいですよ!土曜日も電話かけたのに全然出なくて、結局、私は一人で仕事したんです!」
最初、その部署の人達も事態を深刻に受け止めてくれなかった。
でも3分くらい立つと、部長が
「確かにおかしい。Tさんの家に行ってくる」
そう行って部長と同僚の一人がTさん宅に向かった。
1時間後、衝撃的な言葉を聞いた。
「Tさん、口から血を吐いて冷たくなっている!」
警察と救急がきて、暫くして死亡が確認された。
私は自分を責めた。私が土曜日に異変に気づいていれば、Tさんは助かったかもしれない。
今となっては普通はあの時、ここまでの事態を想像する事はない、と割り切れるが、あの時はそうも行かなかった。
頭では不可抗力と分っていても、心に何かがのしかかってきた。
「…Tさん、ゴメンな…。」
私のあまりの落ち込み具合に、周囲は励ましの声をかけてくれた。でも、中には「お前が気づいていればTさんは助かったかもしれない」「どうして異変を疑わなかったのか」と、心無い言葉をかけて来る人も2・3人いた。
本当に身が引き裂かれる想いだった。
私は励ましの言葉は全く耳に入る状況ではなく、「自分のせいでTさんが死んでしまった」と言う少数の声を重く感じていた。
それから約1年間、私は会話の中にTさんの名前が出ただけで、「消えてしまいたい」と思うようになってすごした。
時間が過ぎるにつれて、Tさんの死は過去のものとなって、今では普通に語れるくらいに安定しているけど、身近な人の死に直面すると、関係者は「自分に原因があったのでは」「防ぐ事が出来たのでは」と自分を責めてしまう。
そして今日。
既報の通り、後藤騎手が亡くなった。
目下の所、自殺と見られている。
ネット上では、色々な(根拠のほぼ無い)憶測が流れている。
今時点で多いのは「二度の落馬事故、そして先日の落馬が引き金になった」と言う理由で、自殺の原因を岩田騎手や北村騎手に求める声が多い。
そういう、根拠の無い誹謗中傷は止めて欲しい。
岩田騎手や北村騎手だって、今頃、「自分が原因なのでは」と自分を激しく責めているかもしれない。
でも、それが原因だとは、誰も証明できない。
同じく、奥様やご息女、両親や関係者も、身を引き裂かれんばかりの自責の念に苛まれているに違いない。
武豊騎手や、蛯名騎手、横山騎手など、騎手仲間だって自責の念を感じているかも知れない。
後藤騎手の死を乗り越えるために、遺族・関係者は、心の痛みと闘って行く事になります。
みんながこの悲しい死を乗り越えられるように、ファンは今はただ静観が必要だと想います。
誰が、何が原因など、今は誰にもわかりません。根拠の無い憶測を立てて、関係者を追い詰めるような事はして欲しくない。