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92件のひとこと日記があります。

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2020/10/24 17:06

長い距離を美しい姿で

私の通っていた高校は制服が可愛かったせいか、容姿端麗な子が多くて、通学時にすれ違うだけの他校にファンクラブができるなんて子もいた。
確かに右を見ても左を見ても可愛い子がいっぱいいて、一人くらい大したことがないやつがいても良いんじゃないのかと探して、やっと見つけたのは鏡に映る自分だったという塩梅だ。いや、私もそんなにひどくはない。私だって正月や盆に親戚の叔父さんや祖ちゃんに会えば「まあ、別嬪さんになって」と褒められたりしたものだ。まあ、お世辞で、年に二回だけのことだけども(泣)。
しかし、女というのはそういう嘘だか本当だかわからないふんわりとした誉め言葉を子供の頃から浴びせかけられて微笑みを覚えたり、ありがとうというお礼の言葉や愛嬌を覚えるものだ。そしてひとつずつ「ああこうして微笑めばみんなと仲良くできるのか」と学んでいく。容姿が良い子は「可愛いね」と常に褒められているのでそういう経験が多い分、とても愛想が良い。自分の綺麗な微笑みが周りの人たちを幸せにすると知っているのだ。
やたらと可愛い彼女らの中でも飛びぬけてかわいい子が3人ほどいて、その子たちの中のひとりが私と同じ大学に進んだ。彼女がアルバイトでレジを打てばそのレジにばかり人が並んで握手会のような盛り上がりを見せ、彼女がいつもの時間に駅のホームに立てばその時間を知っている男子高校生が電車の窓という窓から顔を乗り出して電車が傾くという、ちなみに午後三時の普通電車はその男子高校生のせいで「顔面電車」と呼ばれていた、男子生徒の執念、おそるべしである。
私の高校生時代はそういう美少女たちに囲まれてさぞや屈辱に満ちたものになったのだろうと想像されるかもしれない。けれど、案外そうでもなかった。美少女目当てに何処へ行っても男の人は波のように寄せては引いて次々と現れるが、美少女たちは「知らない人に声をかけられても返事をしてはいけません」「もし制服のままそのような行為をするのなら退学」という校則に実に忠実で「男の人怖ぁぁいっ!」とやたらビビっていたので、完全に無視だった。無視をするとすぐに諦めてくれる人がほとんどだが、ひどい言葉を投げかけて去っていく人もいて、一度うちの色白の大草原のローラ風の美少女に「ブス!!」と捨て台詞を吐いた人がいて、彼女はショックで泣いてしまって、思わず「このお顔のどこがブスなんだ! 嘘だろ、教えてくれ、この美しい顔のどこをどう見たらブスに見えるか。見える場所を教えてくれ、そこに住むわ、住んで悪い優越感に浸るわ、どの方位だ、角度だ、教えてみろバカ野郎!」と叫んだものだ。
前置きが長くなった。ここから本題だ。
バビットのことを描きたいのである。この馬が尾花栗毛で流星があり、これがまた美しすぎるので、私は居ても立ってもたまらずこの文章を書いている。
昔はサッカーボーイ、これは栃栗毛か、そしてトウショウファルコという美のカリスマ、そして忘れえぬトーセンシャナオー、まだまだいるな綺麗な馬、ああ、馬体詐欺と謳われたエイシンフラッシュオルフェーヴルの栗毛も綺麗で好きだった。
綺麗な馬はそれだけで人から愛される。
けれど、それだけでは生きられない。

逃げろ逃げろバビット
二冠馬が追ってくるぞ。
前に誰もいないコースをあなたの鼻先が切り裂いていく。
その姿は美しいだろうね。
私はそれが見たい。
坂を上って、逃げ馬が逃げ切れないという四コーナーの鼻を切って、
あなたが走るその姿に声を枯らしたい。
美しさはそれだけで、応援に値する。
私の同級生の美少女たちも今、いろいろな幸せと困難を乗り越え、自分の力で生きている。
若く美しいという人生の付加がもたらすものに惑わされず、
自分の道を探して今も邁進しているだろう。
菊花賞。
美しく過酷な長い長いレースを前に私は彼らの栄光を

信じている。

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  • ミナさん

    めちゃウケました
    天才ですか?

    2020/10/24 17:55 ブロック

  • ミナさんがいいね!と言っています。

    2020/10/24 17:55 ブロック

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