166件のひとこと日記があります。
2010/06/17 19:10
栄冠への扉
ドンドンドンドン
けたたましく、あばら屋のドアが叩かれる。続けてドアを叩いた者が中の住人に有らん限りの声で呼び掛けた。
「オーナーオーナーっ私です。借金取りじゃないから出て来てください」
そう、呼んでしばらくして僅かに扉が開く。そして僅かに開いた扉の隙間からジーッと外を覗く視線…
「お前か…何だ、デカい声張り上げて…家が壊れるだろうが…」
ようやく、扉が全て開き中からオーナーと呼ばれた男(いや。何のオーナーなのかは解らないが、間違いなく出てきた男からはオーナーという肩書きは微塵も感じられない、そういった風貌の人物)が出てきた。いかにも面倒くさそうに。
すると、あばら屋の住人を呼び出していた男は、出てきた男が本当に自分が呼んだ人物なのか我が目を疑っていたが、間違いない事が分かると本題を切り出した。目を爛々と輝かせて。
「勝ちましたよ?キャラメルくん早速会いに行きましょう」
あばら屋の住人の男は黙ってその言葉に疑いの眼差しを向けたがどうやら本当のようである。
「マジ?」
そう聞き返すと、ウンウン頷く目の前の男を見て「ヨシッ」とガッツポーズをした。そして肝心な事に気付く。
「口取りは誰がやったんだ?」
「私が変わりにしましたよ?…。オーナーは『ビンボーだから北九州に行っても下関でフグ食えないから行かない』って言ってたじゃないですか?。」
「わ?ッバカぁーお前クビー」
「な、何でですかオーナーが行かないって言うから代理で行ったってのに大体、北九州にだって自腹切って行ってんですよーっ」
「うるせーっ口取りは馬主の特権だ代理なんて許可しねぇー」
「あー、もういいから早く着替えてください。キャラメルくんに会いに行きますよ」
「おい。」
「はい?」
「確か、チョコちゃんも出走したよな」
「へ…」
「だーかーら、チョコちゃんも今日レースだったよなチョコちゃんの結果はどうだったんだ?」
「オーナー、今日はキャラメルくんに会いに行くんです。チョコちゃんは、また今度…」
「チョコちゃんの結果は???っ」
「スイマセンシンガリですっ」
「わ?ッわ?ッお前クビー絶対クビー」
その頃…
『オーナー、ボクがんばったよクラシックも頑張るからね』
バカな馬主には勿体なさすぎるキャラメルくんがオーナーを待つ姿が見られたのでした。