43件のひとこと日記があります。
2010/07/23 22:38
「迷子のなる木」
夏になると寝覚めが悪い。
朝の暑さと蝉の声。
おのれウルサイ蝉どもめ!
ずっと地中で暮らせばいいものを!
いつもの帰り道、何やら地面を這う物が…
ゴキブリ!?
ちょ、動き遅くね?
よくみるとなんと蝉の幼虫(蛹?)
このやろー、ざまーみれ!
ばーかばーか道に迷ったな!
木にたどり着けず、ズンズン道路を目指してる。
あのままじゃ車にひかれて終わりだな…
エレベーターに乗ろうとして、ふと考えた。
ずっと暗闇で過ごして、日の目を見ずに死ぬって…
可哀相だな…
道に戻ると、蝉は弱々しく車道に向かって歩いていた。
かなり弱っているようだ。
拾い上げると、必死に指にしがみつく。
適当な木に掴まらせてやろうと、近くの木の幹にくっつける。
…ポロリ
あわれ力なく転げ落ちる。
何やってんだ蝉!頑張れよ!
2、3度同じように幹に押し当てるも、力なく転げ落ちる。
もうダメなんだなコイツは…
これが最後だぞ…
転げ落ちた蝉を掴んだとき、弱々しくも懸命に指にしがみつく姿に、何か助けてくれという声が聞こえたような気がした。
ちょっと待てよ?葉っぱならぶら下がれんじゃね?
俺天才!
ガシッ!
見事に成功!蝉大勝利!
脱皮する余力があるかはわからないが、あとはお前次第。
頑張れ蝉!
翌朝、昨日の木の枝を見ると見事な蝉の抜け殻。
やったな!蝉!
その日は、クソ暑い蝉がミンミン鳴く通勤路も煩わしく感じられず、ただ汗をかきながら道を歩いた。
奴らの勝利の雄叫び。
好きなだけ歌え。
その晩、道路に2匹の蝉の幼虫がアスファルトを道路目指して進んでいた…
ばかやろう!そっち行くな!
こうして異様に蝉の抜け殻のある木が出来上がりましたとさ。
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【後日談:がんばれ俺】
毎晩 蝉レスキューに勤しむ俺。
今日は4匹げっと!
ホンマこいつらアホ過ぎる…。
ある日、いつものように蝉レス(業界用語)を行っていると、遠くで話し声がした。
通りの向こうで高校生がたむろしていた。
気にせず蝉レスる(今風)俺。
今日は1匹か…
なんて寂れた漁港の漁師よろしく、感慨深げに辺りを見回すと
アッー!
もう一匹発見!レス!レス!
捕獲すべくゆっくりと歩みよる。
「おやすみ?また明日?」
高校生が解散し、各々の帰路へと向かう。
蝉に歩みより、いざ捕獲せんとしたその時…
バキッ!
哀れ蝉は高校生に踏みつぶされた…
俺「あっ…」
高校生(以下、高)「えっ?」
俺(蝉よ、死んでしまうとは不甲斐ない…)
高 「あっ、すいません…」
俺 「え?」
高 「虫集めてはったんですよね」
俺 「えっ」
高 「えっ」
俺 「…集めてへんで、拾って木にくっつけたろうとして…」
高 「…はぁ…」
俺 「まぁこれも運命やからしゃーないな」
高 「はぁ…」
俺 「気にせんといて」
高 「なんか…すいません」
俺 (うわ…ヘコんでる…)
去り際に高校生がこちらを振り返った。
高 「あの、頑張って下さい!それじゃ!」
俺 「えっ」
そういうと走り去っていった…
一体何を頑張るんだと、とても恥ずかしい気持ちでいつものように蝉を木にくっつけた。
時計は深夜0時30分を指していた。
確かに…。色々頑張れ!
俺!
完 -
>>ちぐらさん
林サンは言う。
「蝉は良質な蛋白源。これ豆知識な。」
エコロ爺! -
ちぐらさん
この夏、最上の感動作ついに公開------!
それは一匹の蝉から始まった
蝉と男のひと夏の感動巨編!
全米震撼!
「蝉と林さんの夏休み」
提供 うまいるスタジアム