43件のひとこと日記があります。
2010/11/08 23:02
迷子のグー【猫鼬の村:前編】
牧場から山をひとつ越えたその先、大きな森の中程に猫鼬の巣はあった。
人間達に追われ、人気の無いこの場所で、彼らはひっそりと暮らしていた。
30匹ほどの猫鼬が棲む森。
彼らはこの森の事を[村]と呼んでいた。
がっしりとした雑種犬が、その巣の入り口のあたりで体を丸め休んでいる。
その犬の横で、猫鼬が奇妙なダンスを踊っていた。
犬はフン!と鼻を鳴らし猫鼬に話しかけた。
犬
「レオルよぉ、さっきからバタバタ五月蝿くて眠れやしねぇんだがよ…」
レオルと呼ばれた精悍な顔つきの猫鼬は、踊るのをやめ、犬にこういった。
レオル
「なぁマイセン、男ってのは常に鍛錬するもんだろ?」
マイセン
「はっ!暑苦しい奴だなおまえは。さっきからクルクル回って頭いかれちまったんじゃねぇのか?」
レオル
「まぁ?ジジィにゃわからんよな( ̄∀ ̄)」
マイセン
「ぬかせや、コワッパが!(`皿´)」
マイセンはそう言うと、怒るでもなく、やれやれという風にそっぽを向いた。
若き猫鼬レオルは、この村のリーダーである。
幾度かの狼達の襲撃や、ハンターとの戦いにおいて、常にこの村を守ってきた。
その体には無数の傷跡が刻まれ、尻尾は根本からごっそりと無くっていた。
レオル
「俺は尻尾がねぇからよ、こうやってバランスとる練習しとかねぇとな」
マイセン
「へーへー…」
マイセンは呆れ顔で、村の少し奥へと歩いていった。
動く度に波打つ筋肉と、
ボロボロの毛皮とが、この老犬もまた数多の戦いを乗り越えてきた事を物語っている。
マイセンはレオルから少し離れた場所に腰をおろすと、大きな鼻息をフン!と鳴らした。
ひとしきり運動を終えると、レオルは村の方を見やった。
レオル
「お?い、ココぉ」
しばらくして、枯れ草の奥から、ココと呼ばれた雌の猫鼬が顔を出す。
ココ
「なに?寝ようと思ってたんだけど?(-_-#)」
ココは枯れ草を抜け出し、不機嫌そうにマイセンの頭に肘をついてもたれかかる。
レオル
「運動したらハラ減った( ̄○ ̄)」
ココ
「あんたねぇ…」
ココが今にも怒り出さんとした時、不意にマイセンが立ち上がった。
ココ
「きゃっ!ちょっとマイセン!(-△-#)」
マイセンは鼻先にしわを寄せ、低いうなり声をあげた。
その視線は遙か先の林に向けられている。
ココ
「!」
レオル
「へっ…来やがったか」
レオルは口許に太い笑みを浮かべ、林の奥に浮かぶ無数に光る眼を睨みつけた。
暗闇の中、木々の間から三頭の狼がレオル達の様子をうかがっている。
レオル
「ココ!村に戻ってミンナに外へ出るなと伝えろ!」
事態を理解し、心配そうにレオル達を見ると、ココは返事もせずに慌てて枯れ草の中に戻った。
「マイセン!いつものやつ、いくぞ!」
マイセンは足早にレオルに近づき、ボールでも拾うかの如く、レオルの体を鼻先ですくい上げた。
レオルが背中に乗るや否や、マイセンは狼達に向けて猛然とダッシュした。
マイセン
「振り落とされんなよ!」
二匹は矢のような速さで、闇に向かって走りだした。
猫鼬の森:後編へ
つづく