グランプリモズ

阪神大賞典。
仁川のターフに若き灰白の魔王が畏怖百々と降臨した、そのひとつ前‥‥

同じオーナーをもち、ひとつ年下の僚馬はその稀なる才能を芝1600メートルにいかんなく発揮して、マイル戦線の王道を中心的存在として歩んでいる。
名前はそのオーナー会社名を冠につけてもらい 、さらに「トップなんだぞ！」と言わんばかりの「ボス」
まさに花形街道を邁進している、（株）グランプリ所有の、グランプリボス。

そのちょっと前に競争馬として生を受けて前途洋々な駿馬に与えられた名前は「モズ」
「あれ？なんかおかしくね？ オレ鳥に生まれてきた覚えはないし、そりゃたしかに体型はゴロッとしてモズモズって感じだけと、なんかせめてグランプリなんちゃらとか、百歩譲ってグラモズとか、なんかあったでしよ？？！
そんなんだったら、オレ、それなりでモジモジっとしか走らないからね！！」‥‥

と、そんな主張が（株）グランプリ所有の、モズ君にあったかどうかはさだかじゃないけど、確かに１っこ下のボス君に大きく先を行かれている現状‥‥。「ボス君かっこいいよな、シュッとしてるし、力あるし、人気あるし、グランプリだし、‥‥‥」

一生懸命走ってる、練習もしてるからやれるはず 、でももっているはずのチカラが出せない‥‥、「名前のせい？」

悩んだ、迷った、あきらめかけた。
でも、矢作のおっちゃんも、国分にぃちゃんも信じてくれてた。

阪神10R, 但馬S, 「勝たせてやる」ゲート内で、鞍上の国分恭介が囁いてるように見えた、「そのかわり絶対あきらめるな！最後まて突っ張れ！お前だってグランプリだ！」

仁川の最終コーナーから直線で一度はマイネルメダリストに頭を抜かれたとき、紅白の、グランプリのマスクの目の奥にあるスペシャルウィークの繋がりが点火した‥。
「オレはモズだ！ボスじゃなくてモズだ！いくらだってかっこ良く走ってやる」

モズ、君のことを強いと信じている人間もいるよ、恭介にぃちゃんみたいにね。
オレも信じてる、もっと、もっと、羽ばたけるって。、まだまだ大きな舞台でモズって名前が強い馬の代名詞になることを。
勝ちのきっかけはつかんだ、あとは行くだけ。がんばれモズ。