アンカツさんの油断 エリザベス女王杯

『ブエナビスタ届くのか？ブエナビスタ届くのか？
これが競馬だ、これが競馬の恐ろしさ、勝ったのはクィーンスプマンテ！』

アナウンサーの叫びを聞きながら呆然と画面を見つめた

秋華賞で失った名誉を取り戻すべく臨んだ女王杯、古馬を差し置いての圧倒的な一番人気。負ける姿なんて想像すらできなかった

そしてこの敗北は単なる敗北では終わらなかったんだ

序盤からクィーンスプマンテとテイエムプリキュアが逃げる。ブエナは後方3番手、誰もが逃げた2頭はいずれバテると考えていた
だが3番手以降が後方のブエナを意識するあまりスローになり、平均ペースで逃げる前2頭との差は開く一方

坂を下る頃になって漸く前年の覇者、リトルアマポーラが前を追い始める。ブエナも持ったままの手応えで少しづつポジションをあげる
しかしこの時点で鞍上が考えていたのは前を行くアマポーラとの差。アマポーラさえ交わせば今日は楽勝、そう考えていた
だが4コーナーではじめて異変に気付く
どよめく場内とはるか前を行く2頭の影
誰もが諦めた気の遠くなるような差をブエナだけは諦めていなかった
一完歩づつ詰まるその差、他の馬が全て止まっているかのような伸び、まさに異次元！

上がり32.9秒、あり得ないほどの底力で唯一2頭に迫った伝説の走り・・・

アンカツさんに育てられ、アンカツさんと共に歩んできたブエナ
だがこのレースでの後方待機策と鞍上の僅かな油断が非情な乗り替わりへと結び付く

このレースが愛すべき名コンビの最後のレースとなったんだ

(写真 ; 絶望的な差、詰め寄るブエナと勝ったクィーンスプマンテ&田中博騎手)