有馬記念

突然ではあるが2011年10月8日から開始したこの予想コラムを本日2014年12月28日をもって終了したいと思う。ご存知の通り毎週、毎レース当たり前のように刻んできたものが先週途絶えてしまった。こういう連載ものは続いている間はたとえどんな状況でもそれを原動力や励みに頑張れるが、一度でも飛ばすとピンと張り詰めた糸が切れるように気持ちの面で修復が難しくなる。

競馬総合ちゃんねるの時代から予想の投稿はしていたが、ネット競馬に移行してからは大幅に投稿の幅も広がりこの３年間は様々なことを書いてきた。日々の積み重ねで最終回のきょうが665回目。我ながら本当によく続いてきたものだと思う。的外れ、見当違いの結論も多く、ほとんどいないと思うが読者を惑わせてしまったこともあるかもしれない。ただ個人的にはそれぞれが大きな財産だ。

身銭を切るからには生半可な気持ちではやっていけない。様々なファクターを駆使して、根拠をあぶりだし、納得のいく答えを導く。そしてそれを文字に起こすことで改めて自らの考えを整理する。この予想コラムはそういう時間だった。思うように言葉に表せない、伝えられないことも少なくなかったがその上でこういう考え方、こういう角度からの見方もあるよと視線や発想の転換のきっかけを提示出来ていたら幸いである。

2015年はじぶんにとって変革の年になりそうな気がしてならない。競馬と向き合う時間も暇を持て余していた時代から格段に減っている。どの道ここらが潮時だった。ただどんな仕打ちを食らっても競馬は好きだ。なにがあってもそれだけは忘れない１年でありたい。トーセンバジル、エトランドル、そしてきょうの復帰戦で豪快な勝ち上がりを決めたアクセラレート。確実に芽吹いている期待の次世代たちも楽しみだ。


総決算のグランプリ有馬記念。Ｇ１全般に言えることでもあるが、とにかくいい思い出が皆無。04年にタップダンスシチー、ゼンノロブロイのニアミスで外してから、05年の衝撃的なハーツクライの掌返し、08年最悪の捲り連鎖事件、09年は的中しているが人気サイド、大きな希望と大きな不安が同時に渦巻いた11年アーネストリーの63秒8、近２年に至っては有り得ないほど大差のシンガリとブービーだ。

しかし今年は最高のパートナーがいる。高らかに復活を宣言し、消化不良の秋に別れを告げて、このコラムのラストを華々しく飾ってもらおう。渾身の◎はもちろんフェノーメノにうった。天皇賞(春)を連覇したスターホースもこの秋は天皇賞(秋)１４着、ジャパンカップ８着と苦しんでいる。敗因は複数が絡み合っている。ただひとつだけ確かなことはフェノーメノの競馬になっていないことだ。

天皇賞(秋)はメンタル面に休み明けの影響が出て走る気の欠如がスタート、位置取り、直線の伸びに表れていた。ジャパンカップは１角の入り方がすべて。岩田康誠らしくない消極的な騎乗がフェノーメノらしさを消してしまった。バテないだけのスタミナはあるのだから少々の無理は覚悟で出していくべきだった。ダービーは差して２着だったがフェノーメノの良さは“前受けからの持続力”だ。

｢肉を斬らせて骨を断つ｣競走馬の最強形である王道の戦法を許された数少ない現役馬である。過去に中山を不安視する声もあったがステイヤー気質の高まった今ならスピード勝負になりやすい東京よりも合っている可能性が高い。まして中山の非根幹距離重賞を２勝。舞台適性を否定する方がおかしい。評価は落ちているが他の有力勢以上に戴冠の資格をもった馬だ。

最終追い切りはいつも通り南Ｗで単走。時計は目立つものではなかったが、陣営の言うようにいい頃の前向きさや煩さが戻っている。１週前には併せ馬で好時計をマークしているし、秋３戦目だから体は十分にできている。出走馬唯一の美浦所属に、今年念願のＧ１を勝利するなど目覚ましい躍進を遂げた田辺裕信の騎乗。まさに関東の代表だ。積極的なレース運びか
ら、乾坤一擲のラストスパートでの有馬記念Ｖを期待する。

《最後に》

競馬は一頭の勝者以外はみな敗者である。ただ一頭、一頭にストーリーとドラマがある。その部分に共感し、思いを込める。勝った、負けたという感情の二極化には終わらない奥深さが競馬にはある。知力、時には体力を尽くし自信と誇りを抱き打った◎に愛情をもつことが競馬を長く楽しむ秘訣だと考えてきた。もう一度言うが、勝負というのは大多数の敗者によって成り立つものだ。だから決して負けることを恐れてはいけない。

長年のご愛顧ありがとうございました。心から御礼申し上げ、終わりの挨拶とさせていただきます。