阪神ＪＦ

ウオッカに始まり、トールポピー、ブエナビスタ、アパパネ、そして記憶に新しいレッドリヴェールとハープスター。初めて経験する大舞台はうら若き牝馬たちにとって第一歩でありながら、ここで放つ輝きこそ来春への真価でもある。２歳戦は戦果が示す「実績」もしくは数字には表れにくい「将来性」が大きな検討材料となるが、答えはやがて大物に育った名牝たちが最初に手にした、まだ鈍色のアクセサリーが教えてくれている。

小倉２歳Ｓ以来のオーミアリス。待ち受けるハードルは決して低くはない。ただ１番人気の武豊を痛快に差し切り、１５番人気で人馬初重賞制覇に導いた６年目の国分優作。このコンビの化学反応は常識にかからず、暮れの阪神でも再度ドラマを引き起こしてくれるのではないか・・・。そんな希望をもたせてくれる。

前走は1200mでは致命的とも思えるスタートでの立ち遅れ。前半は後方待機だったが、３角過ぎから追っつけながら進み直線は大外。叩き出されると実直な伸び脚を見せ、好位から抜け出しを図っていたレオパルディナを捕らえたところがゴール。前半3F33秒0-後半3F35秒4だから明らかに差し有利の前傾ラップで内容的にはレオパルディナの方が上。

ただ小倉２歳Ｓが示すオーミアリスの価値は“1200mの馬らしくないのに完璧な1200mのペースを差し切った”点にあると考えたい。道中のズブイ感じはスプリンターの反応ではなかったし、末脚も瞬発力で切れたというよりはスタミナに任せてじわじわの印象。いわゆる「カミソリ」より「ナタ」の切れ方。

それもそのはずで父は屈指のスタミナを誇るホワイトマズル。母の父ロイヤルアカデミーもNijinsky系だ。牝馬は牡馬ほどスタミナ色が強くないのは広く知られたところだがビハインドザマスク(スワンＳや京都牝馬Ｓなど重賞３勝)やスマイルトゥモロー(オークス、フラワーＣ)などを見てもマイル付近に対応できるスピードを残しつつも、手頃なスタミナやパワーが伝わっている。

叔父は90年の朝日杯３歳Ｓをレコードで優勝し、ＪＲＡ賞を獲得した元祖○外の怪物リンドシェーバー。従兄弟にはデビュー３戦目に青葉賞を勝って、ダービーで４番人気に推されたアドマイヤコマンドがいる。大一番で仕事をしでかす雰囲気や意外性を秘める一族と言えるだろう。ホワイトマズル産駒の重賞勝ち時の人気は２７勝中１番人気(２)回、２番人気(４)回、３番人気(６)回で６番人気以下が(７)勝。穴血統にあってもオーミアリスの１５番人気Ｖは異色を放つものだ。

３か月ぶりの実戦が最大のポイント。本数は多くないが３週連続してＣＷで追われているのは好感が持てる。11/28の併せ馬では遅れていたが、12/3には6F81秒5-4F50秒9-1F12秒2と文字通りひと追いで一気に動きが良化。最終追い切りもラスト重視で上がりは11秒9と力を出せる状態。コースでメリハリのつく追い切りができるのは距離延長でも折り合える証拠だ。

騎乗する国分優作にとっても正念場だ。トップジョッキーでさえ、乗り替わりが頻発するこのご時世。重賞勝ちをもたらしたとはいえ、オーミアリスが上を目指すには一緒に越えなければならない壁だ。１３番人気ダノンプログラマーを駆って勝利したオーロＣや１５番人気３着で波乱を演出したサカジロロイヤルの京阪杯など芽は出つつある。人馬ともに将来性が問われるターニングポイントの一戦だ。

レッツゴードンキ(父キングカメハメハ)も現時点での能力は確実に上位。道中ペースが落ちずに流れた札幌２歳Ｓでは捲って０秒２差３着、アルテミスＳは馬群を捌くのにやや苦労しながらも勝ち馬ココロノアイとはハナ差。この中間が反応を確かめる程度の馬也ばかりなのが注意すべきところだがマメに乗り込まれている分でイーブン。女王候補だろう。

不安なのがアルテミスＳ覇者のココロノアイ(父ステイゴールド)時計が追い切り含め３本で直前は馬也。しかも事前の馬体重発表で減っていたようにレース後の回復が芳しくない可能性大。血統背景も含め、推したい１頭ではあるが輸送も絡むと苦戦必至。

ならばりんどう賞の末脚が鮮やかだったコートシャルマン(父ハーツクライ)負かしたダノングラシアスがファンタジーＳで２着しているし、能力的に大きく劣ることはない。ここ２週の調教は抜群だった。大穴は関東馬カボスチャン(父タニノギムレット)上がり2F目の10秒9で堂々抜け出した姿に善戦の予感がする。