ジャパンカップの想い出

東京のオーラスを飾るジャパンカップは日本ダービー、有馬記念と並ぶ超Ｇ１。日本馬の急激なレベルアップにより、欧米列挙の猛者と凌ぎを削るという本来のテーマこそ薄れてきた近年でもチャンピオンコースである東京2400mという条件および、１着賞金２億５０００万という破格の設定に国内の強豪が一堂に会す夢舞台。しかし何より手に入れたいのは国内最強の称号だ。

2004年は天皇賞(秋)を制したゼンノロブロイにダービー馬キングカメハメハを欠いた布陣も死闘のダービー２着ハーツクライ、同３着ハイアーゲームに、菊花賞馬デルタブルース、そしてこの年の競馬界を牽引してきた道営の星コスモバルクら３歳馬が挑む構図。詰めの甘さが課題だったゼンノロブロイにとっては試金石の一戦となったが、すべては彼のために用意された国際決戦の場となった。

先導役となったのが３頭出しの藤沢和雄厩舎の一角であるマグナーテンと岡部幸雄のベテランコンビ。ゼンノロブロイは互角のスタートから無理なく中団の前につける盤石の態勢。序盤から淡々と流したマグナーテンの前半５Ｆは５９秒６。その展開を離れた２番手から窺っていたのがコスモバルク、デルタブルースは早めに動いて粘り込んだ菊花賞から一転して差しの位置。次いでハイアーゲーム、最後方からハーツクライの追走。

このレースで最も進化した姿を見せたのは紛れもなくコスモバルクだったと言える。新たにタッグを組んだＣ．ルメールとの呼吸がぴったりで道中はスムーズに折り合う。暴走となったダービーの醜態や苦い思いを払拭するに留まらず、競馬史に名を残す大偉業の予感さえ漂った。しかし、満を持して戴冠の時を狙った若き才能に円熟味を増したゼンノロブロイとＯ．ペリエが襲い掛かる。

４コーナーを絶好の手応えで通過したゼンノロブロイは直線早々にマグナーテンを交わして先頭に立ったコスモバルクを目標に王道の仕掛け。加速化もあっという間なら、交わし去るのも一瞬で見事な手際の良さ。白熱する２着以下の争いを尻目に上がり３ハロン３４秒３の末脚で堂々と３馬身差をつけてのフィニッシュ。他を寄せ付けない有無を言わせぬ強さはゼンノロブロイ時代の到来を告げたのと同義だった。

次世代を担う上で大きな期待が寄せられていた３歳勢はゼンノロブロイの前に完敗だったが、なかでも明暗分かれる結果となった。コスモバルクは外から伸びたポリシーメイカーに一旦は完全に抜かれたが差し返すど根性を発揮して２着を譲らなかった。一時的とはいえ、気性の危うさを克服し大舞台で掴みとった着順に次走以降へと繋がる大きな意味を持つ価値ある内容だった。

馬群を縫って進出してきたデルタブルースは新味を見せての３着で菊花賞がフロックでないことを証明し、順調にステップアップを果たした。一方で終始流れに乗り切れずレースに参加することなく敗退したハーツクライ、ハイアーゲームにはダービーの後遺症が囁かれ始めた時期でもあった暗黒期。日本の古馬勢に目立った存在もなく、５頭が出走した外国馬もポリシーメイカーが見せ場を作ったのみ。この年のジャパンカップはゼンノロブロイのために用意された檜舞台であった。


今年で３４回目を数えるジャパンカップは史上最高とも呼べる豪華絢爛な顔ぶれとなった。凱旋門賞に出走したハープスター、ジャスタウェイ。ドバイシーマクラシックを制し３連覇という前代未聞の高みに挑むジェンティルドンナ、天皇賞(秋)でＧ１初制覇を飾り先輩ゼンノロブロイの後を追いたいスピルバーグ。今年の日本ダービー馬ワンアンドオンリー、皐月賞馬で東京巧者のイスラボニータの３歳馬たち。十指に余る激闘の幕が開く。

【キャピタルＳ】
騎手の華やかさに負けず劣らずの好メンバーが揃った。別定戦なので富士Ｓ組が有利だと思うが少し捻ってアーデントを本命に抜擢する。京成杯ＡＨは休み明け＋位置取りが普段より後ろの競馬だったが最後まで脚を伸ばして０秒５差(９着)戦法に幅が出るのは歓迎だし、少し時計の掛かる馬場も向く。仕上がりは上々だし、ここでジャパンカップの資金を上積みする。

◎アーデント
○キングズオブザサン
▲リアルインパクト
△トーセンレーヴ