マイルチャンピオンシップ

安田記念、マイルＣＳの枕詞は近年すっかり定着した“おなじみの大混戦ムード”。毎回囁かれるマイル路線のレベル低下ももはや語るに足らずの体たらくだ。一連の重賞戦線を見ていると役者はまずまず揃っているように思えるが不足なのだろう。過去10年のマイルＣＳで前走マイルだった馬の優勝は11年エイシンアポロンのみで連対を含めても09年マイネルファルケと10年ダノンヨーヨーが増えるだけだ。

過去10年の３着以内馬３０頭の前走成績は以下の通り

０４年１着デュランダル　スプリンターズＳ２着
　　　２着ダンスインザムード　天皇賞２着
　　　３着テレグノシス　天皇賞１１着《２人気》

０５年１着ハットトリック　天皇賞７着
　　　２着ダイワメジャー　毎日王冠５着《１人気》
　　　３着ラインクラフト　秋華賞２着

０６年１着ダイワメジャー　天皇賞１着
　　　２着ダンスインザムード　天皇賞６着
　　　３着シンボリグラン　スワンＳ２着

０７年１着ダイワメジャー　天皇賞９着《３人気》
　　　２着スーパーホーネット　スワンＳ１着
　　　３着スズカフェニックス　スプリンターズＳ《２人気》

０８年１着ブルーメンブラット　府中牝馬Ｓ１着
　　　２着スーパーホーネット　毎日王冠１着
　　　３着ファイングレイン　スワンＳ５着

０９年１着カンパニー　天皇賞１着
　　　２着マイネルファルケ　富士Ｓ９着《５人気》
　　　３着サプレザ　サンチャリオットＳ１着

１０年１着エーシンフォワード　スワンＳ８着《１人気》
　　　２着ダノンヨーヨー　富士Ｓ１着
　　　３着ゴールスキー　清水Ｓ１着

１１年１着エイシンアポロン　富士Ｓ１着
　　　２着フィフスペトル　スプリンターズＳ６着
　　　３着サプレザ　サンチャリオットＳ１着

１２年１着サダムパテック　天皇賞８着
　　　２着グランプリボス　スワンＳ１着
　　　３着ドナウブルー　府中牝馬Ｓ３着《１人気》

１３年１着トーセンラー　京都大賞典３着《２人気》
　　　２着ダイワマッジョーレ　スワンＳ２着
　　　３着ダノンシャーク　富士Ｓ１着


前走Ｇ１組が９連対、Ｇ２組が８連対と互角だが勝ち切っているのはＧ１組。ただ今年の場合はグランプリボス(スプリンターズＳ４番人気４着)とタガノグランパ(菊花賞４着)だけなので素直に一昨年の２着馬を軸に据える手が有効な作戦になるかもしれない。

一方でＧ１組が絡まないと波乱含みの傾向。前走Ｇ２着なら連対が最低ライン、もしくは05年ダイワメジャーやエーシンフォワードのように人気を前走の基準にするべきだろう。これで拾えるのはスワンＳ１着ミッキーアイル、毎日王冠２着サンレイレーザー。

京都大賞典１番人気３着のトーセンラーも許容範囲だし、毎日王冠２番人気５着のグランデッツァもぎりぎり当落線上。毎日王冠１番人気１３着のワールドエースは人気が無ければの考えもあったが明らかに危険。あと警戒なのは近走不振でもＧ１馬。テレグノシスやスズカフェニックス、ファイングレインなどはきっちり食い込んで力を見せるケースもある。富士Ｓ組はＶが欲しい。

前走Ｇ１組が手薄な今回注目すべきは毎日王冠組。「府中1800m展開いらず」と言われるが開幕週の前半5F59秒1は決して速くないし、ラストも11秒2-11秒3-11秒8＝「1分45秒2」まさにどの脚質にも平等な決着かつＨレベルなスピードの持続力勝負だったことはスピルバーグが天皇賞(秋)を制したことからも分かる。

スピルバーグは東京巧者でもあるので一概には言えないがマイルＣＳに出走してきても当然首位争いだったはず。その観点からすれば毎日王冠で僅差の馬たちに期待するのも無理な相談ではない。◎はロゴタイプにうった。この馬、皐月賞をレコードで勝っているように父ローエングリン譲りでかなり前向きな気性の持ち主だから近走は制御が効かなくなっている感じの印象。

毎日王冠(６着)は絶好のスタートから控えた末に引っ掛かるという最悪の騎乗ぶり。得意の高速決着だっただけにあのまま馬の行く気に任せていればと思わざるを得ないレース。中団からでは全く味のない馬だから直線に賭けたところで伸びずバテず。その中での０秒４差はよく粘り切ったと評価を上げたい。

ドバイ遠征で調子を崩していたが、追い切りではメリハリのついた動きで復調をアピール。中山記念では58キロでジャスタウェイの３着があるように力の衰えは微塵もない。朝日杯ＦＳ以来となる２戦２勝と絶好の相性を示すマイル戦。三浦皇成→Ｃ．ルメールへのスイッチで願ってもない大チャンス。重賞未勝利馬のＶが続く今季のＧ１戦線だが、Ｇ１馬の底力が魂を揺さぶる渾身の一戦となる。