アイビーＳ

◆ＨＢの人気先行とＳＪの課題
注目の新種牡馬ハービンジャーは先週終了時点で[10-8-6-53]勝率、連対率、複勝率ベースで見ると水準以上の成功と言えるが単回収率33％、複回収率51％は群を抜いて落ち込んでいる。ハービンジャーウォッチャーからすれば期待の表れと友好的に解釈したいところだが馬券的な観点からすれば妙味は皆無だ。

ハービンジャー自体が遅咲きだったから焦りは禁物だが勝ち上がり頭数は悪くないのに現時点で２勝馬がいないのも少々不安。アイビーＳに出走するスワーヴジョージは前走の札幌２歳Ｓ１０着。位置取りが後ろ過ぎた事や４角の不利など額面通りには受け取れない敗戦ではあったが、それを含めても完成度に疑問が残った。

母ギーニョはトゥザヴィクトリーやサイレントディールの全妹で、甥にトゥザグローリーやトゥザワールド兄弟、姪にデニムアンドルビーなど活躍馬を多数輩出している良血だがこの血統はHyperion的な粘りと機動力で走るから断然小回り向き。スワーヴジョージのフットワーク自体は広いコース向きだが、首の高さが明らかにこの一族特有だし東京では強調しづらい。

◆優等生の殻破りたいＳＷ
サンデーサイレンス系の中ではスペシャルウィークも母系の特色を素直に引き出す可能性が高く(一番はマンハッタンカフェ)母父Mr. Prospector系との配合ではSeeking the Goldでゴルトブリッツ、フォーティナイナーでブライトアイザックだからダート色が濃くなるのは至極順当な結果。

オルロフは母父Seeking the Goldとの組み合わせで半兄グレイスフルリープ(ダート４勝)なので芝だとダウト感も漂うが面白いのは母ラビットフットのBuckpasser[3×4]SWの特徴は母父マルゼンスキーがToom Fool≒Flaring Topで一つの形が出来上がっている点。オルロフはBuckpasser[5×4×5]になるから血の脈絡が抜群だ。

新馬戦(新潟2000m)は押し出されるように先頭に立ち3Fから４連続で13秒台が刻まれるようなドスローで正当な能力判断、ひいては芝適性を図る上でもあまり意味のないレースだったがまだまだ緩さのある馬体で上積みはありそうだし、やはり可能性があるならスペシャルウィークには肩入れしたいもの。Northern Dancer系との配合で意外で芝重賞級を送るならこういう配合だろう。

◆栄枯盛衰
ロジチャリスの三代母にあたるシルバーレーンはブラックホーク(安田記念)やピンクカメオ(ＮＨＫマイルカップ)を誕生させるなど非常に優秀な繁殖。産駒に強い影響力を残したのがBold Ruler×Princequillo(ボルキロ)この大きな特徴で東京の長い直線を追い込めた。

この血統が代を経るごとにパンチ不足で尻すぼみになっているのはボルキロの影響力が薄くなっているからと推測できる。前半5F67秒2の超スローを２番手につけながらゼンノロブロイ×フレンチデピュティにやられてしまうのを見ても1800mでは底が割れた。急坂のあるマイル戦がちょうどいい。

レッドルモンドは薄いが母系の奥にナスキロを持っていて、母父がDeputy Minister系のForest Campだからペラペラのゼンノロブロイにパワーを供給するには好都合。将来的に逃げ一手だと苦しいが左回りで２戦している経験は強み。

フォワードカフェはモズ(札幌２歳Ｓ２着)クインズハリジャン(京王杯２歳Ｓ２着)の半弟でゴールドティアラの甥。Secrtariat[5×5]でパワーが勝っているところにDanzig→Storm Catだから順当に前向きな気性のパワー型。調教大将なので過剰評価になりがちだが東京1800mで勝ち切る姿は想像しにくい。