想い出のスプリンターズＳ

春からＧ１ウィークは対象となるレースの１０年前を回想しているが日本ダービー、安田記念といい天候事情がリンクしていて当時の記憶が鮮明によみがえる。04年のスプリンターズＳ。レース前日の土曜、通っていた高校の食堂一角で降りしきる雨を窓越しに見上げながら翌日の予想を仲間たちと練っていた。

迎えたレース当日も関東地方には雨が落ちていた。馬場発表は不良。手元に当時の出馬表があるのだが印や人気指数を見るとサニングデール、デュランダルの序列になっている。春の高松宮記念を制覇し、前哨戦のセントウルＳを順当に叩いたサニングデールに対して、デュランダルは裂蹄明けで２着に敗れた高松宮記念以来。戦前の評価は妥当と言えた。

しかし、あまりサニングデールの話をした覚えがない。むしろ話題の中心は３頭大挙した外国馬(やたら盛り上がった)そしてデュランダルだった。デュランダル好きがいた影響もたぶんにあったと思うが、とにかく破壊力ある凄まじい鬼脚に対する期待が半端なかった。前年のＧ１連勝は見ていなかったし、高松宮記念も頭の片隅にかろうじてあったほど。

だからこそ『名剣』たる所以を堪能する機会にわくわくしていた(春に安田記念出走のプランが故障でなくなっていたのもある)ところが不吉にも降り続く雨である。若葉マークでも追い込み＝雨は苦しい程度の認識はあったから、正直どうなるのだろうか？と色々と考えていたはずなのだが予想ノートには手書きでこう記されている。

「ズバリ本命はデュランダル。休み明けが不安視されるが調教も万全に動き連覇に死角なく、中山の芝もあうので不安はない」なんと清々しいまでの決断だろう。雨の事など露ほども触れていない。本当に雨など降っていたのかと疑うレベルだ。尤もらしいことを並べて対抗もサニングデールにしているし純真無垢も貫けば正当な予想になっている。

「後方一閃」「二強対決」そんな純粋な夢を逃走という形でさらっと奪っていたのが優勝したカルストンライトオだった。この馬もサニングデールと同じくほとんど話題に上がっていなかった気がするのだがレース後記に「もしかすると、と思っていた事が現実のものに・・・」とあるのでどうやら完全に無視していたわけではないらしい。まあまあショックなパターンだ。

Ｇ１を勝つくらいだから弱くはないのだが、とにかく地味で目立たない印象が強く、玄人受けするような馬だったからこの馬はちょっと難しかった。アイビスサマーダッシュの快走も札幌記念と同日だったからＷＩＮＳで観戦していたはずだがレースを細かく分析するなど出来ない段階だったから、まず評価する術を持っていなかった。

電撃の６ハロン。スタートから１分強の争い。後方のデュランダルばかりに目をやっていた当方も、水カキでもついているかのようにスイスイと駆け引きなしに逃げ切ってしまったカルストンライトオには呆然とするしかなかった。それでも春のイングランディーレに続き、競馬へのファイトが一層湧きあがった感じがしたのも事実だ。

今年のスプリンターズＳは１２年ぶりの新潟開催となる。ただでさえ馬場読みが難しいロングラン最終日に昼過ぎから天候が崩れる予報。高松宮記念といい、スピード命の短距離ホースたちにとって過酷な条件になりそうだが至難が大きければタイトルの輝きも増すというもの。あくまでスプリンターらしく“前向き”な一戦を期待したい。


【ポートアイランドＳ】上昇度や持ち時計、斤量など総合的に比較すると３歳牝馬ダンスアミーガ(５２)が最もＶに近い存在と映るが、距離が長かった忘れな草賞(５着)はともかくフィリーズレビュー(６着)の止まり方が解せない。父サクラバクシンオーと祖母ダンスパートナーの血がせめぎ合うような血統で判断に困るが急坂コースだと１Ｆ長い恐れ。

外回りの決め手勝負ならダイワメジャー＜ディープインパクトがやはり強いだろう。同じ３歳でも人気手頃なサトノルパンを狙いたい。ＮＨＫマイルカップは武豊お得意のジェットスキー、ダービーは記念出走だから着順は参考外。２月の東京で上がり33秒0は出色の斬れ味で取りこぼしとさえ思われたファルコンＳも今考えれば相手が悪かった。

直前はＣＷで追走遅れだが稽古したのもオープン馬のメモリアルイヤーだし、テンションの高い馬だから厳しくやりすぎても逆効果だからこれで十分。気性的にも鉄砲の方が向きそうだし首位戦線だ。詰めの甘さは相変わらずだが良化している感じはあるオリービン、絶好時には及ばないがひと雨あればのマックスドリーム、外回りが課題も阪神は得意のアズマシャトルが本線。