紫苑Ｓ・エニフＳ

吉田調書問題で新たに大きな激震が走った一週間だった。国民に真実のみを伝える。客観的かつ中立的な思考と判断の元に初めて筆をとる資格が生まれる。

まして扱う問題がデリケートなだけに取材や下調べ、裏付けには一層の慎重さが求められるはずが数々の誤報に、記事の掲載を巡る杜撰な管理体制まで浮き彫りになった。

情報源秘匿による少人数での取材体制など記事掲載に至るまでの過程がおかしいのも間違いないが結局は人間のやることだ。根本的には功を急いだゆえに招いた結果である。


『急がば回れ』…急ぐときは、早道や危険な方法を選ばずに、むしろ回り道で安全な道を通った方が結局は早く着けるという教え。また目的を達成するのに性急にやらずとも、余裕を持つ方が確実であり、時には好い運をつかむことがあるという意でもある。

『醒睡抄』という説話に出てくる諺で、室町時代の連歌師・宗長が「武士のやばせの舟は速くとも急がば回れ瀬田の唐橋」と詠んでいる。これは東海道から大津へ抜ける際の経路についてで、琵琶湖を渡る船便か遠回りとなる迂回陸路とを比較している。

陸路を行くより二里も近くなったとされる船便は早さの点で大変重宝されたが湖上経路には山から吹き下ろす突風の影響で難破するリスクがあった。だからこそ陸路で安全確実な瀬田の唐橋を渡った方がいいと謳ったわけだ。また孫子の兵法にも「于直の計」という作戦があるなどこの手の訓話には倣うべきことが多い。

５戦２勝のリーサルウェポンに◎を託す。ディープインパクト産駒らしい斬れる脚の持ち主で上がり３Ｆは５戦とも３位以内を記録している。とりわけ前走の500万戦(東京1400m)は4F47秒2のスローペースを中団後ろから直線で目の覚めるような3F33秒6の強烈な伸びでの快勝と素質の高さを見せつける内容。

ＮＨＫマイルカップには抽選落ちで出走が叶わなかったが、即座に目標を秋へと切り替えへ成長放牧。夏場に賞金加算や経験を積ませることも出来たはずだが急がば回れの精神でじっと充電期間に充てた。これが430キロ台にも満たなかった馬体の充実を促した可能性大。

非凡なポテンシャルに体力が伴えば、豪快な末脚に更なる凄みが期待できる。唯一連を外したフラワーＣ(９着)が前半5F62秒1の緩い流れで上位は好位を進んだ馬や内を捌いた馬が中心。何の策も無く後方から大外をぶん回してバウンスシャッセと０秒８差なら悲観する必要は全くない。

しかも当時の(１)(２)(４)(５)(６)着が揃っているのが実に興味深い。確率的には実績のある距離での1000万勝ちが淀行きの最短ルート。ただあえて一見険しい紫苑Ｓへの出走こそ急がば回れに基づき弾き出された計算。新潟記念で１?３着を独占したようにこのコースはディープの庭。Katiesの出身なら2000mも守備範囲。東の最終兵器が混迷の３歳牝馬路線に殴り込む。

相手本線はオークス３着の○バウンスシャッセ。ゼンノロブロイ産駒らしく突出した部分はないが平均点でまとめており完成度は高い。函館記念惨敗はフケの影響だから完全に参考外。藤沢和厩舎にしては強めの調教で負荷をかけているし同世代の牝馬巻相手なら巻き返しは当然。

３番手はフラワーＣ４着、フローラＳ４着と重賞でも惜しい内容を残している▲マローブルー。ディープ産駒にしては器用さがあり、小脚も使えるので小回り向きかもしれないが能力的には上位。△デルフィーノも細化した馬体が休養でしっかり戻っていれば本来の破壊力を再現できる。ショウナンパンドラは調教の軽さが気掛かりで割り引き対象だ。

【エニフＳ】は発馬互角ならという条件付きでドレッドノートを狙いたい。ダート1400mは[4-0-0-2]と相性抜群で３着を外したのは昇級戦だった播磨Ｓ(５着)とオープン２戦目の栗東Ｓ(１３着)阪神1400mでは鳴門ウＳを好位から抜け出しで危なげなく勝っているようにコース適性も十分に秘めている。

３走前の天王山Ｓはスタートで完全に立ち遅れる不利がありながら最後は外を回って４着まで追い込んだようにクラス慣れすればこの相手関係でも見劣りはしないはすだ。調教から大きく変わった印象はないが叩き良化型らしく動きに軽やかさも出てきたし、上積みはある。展開が味方すれば一気の台頭がある。

田中勝春渾身の一鞍入魂タイセイスティング、被せられない外枠なら控えても大丈夫だと判明したキズマ、1400mで折り合いがつけばナリタスーパーワンの決め手にも注意。