札幌２歳Ｓ

◆伝説の序章
新種牡馬ハービンジャーは８月３１日終了の時点で勝ち上がりが６頭。フレッシュサイアーランキングではヴァーミリアンを全く寄せ付けない独走の数字で、２歳リーディングでもキングカメハメハやマンハッタンカフェ、ハーツクライら豪華メンバーと並び３位タイの立派な成績だ。

現役時代は９戦６勝。生涯トータルだと決して目立った競走生活ではなかったが、唯一のＧ１勝利となったキングジョージ６世＆クイーンエリザベスＳがとにかくド派手だった。英ダービー馬、愛ダービー馬を相手に直線だけでレース史上最大着差となる「11馬身差」をつけ、まさに有無を言わせぬ強さを披露した。

その後は故障に見舞われ、結局ターフに戻ることはなかったが、社台グループに見初められて日本での種牡馬入りが決まった(レーティングで140ポイントの高評価を得た矢先だった)ただ３歳４月デビューの晩成型であったことや、2400mが中心のステイヤー気質が嫌われて馬産地での評判は良いとは言えなかった。

しかし日本が誇る巨大グループの後ろ楯は強力だった。社台が貫いた馬作りの信念はやがて決断の正しさを証明し、繁栄の礎となったＳＳ系時代の終焉を告げようとしているのかもしれない。ダンスインザムード、ディアデラノビア、ハッピーパスなど勝ち上がった馬の母父はいずれも社台系列印のＳＳ系だ。

ハービンジャー自身はNorthern Dancer[4×5×4]にNatalma[5×5×5]だからこの系統の血を濃くしないことが最優先で、その先に柔らかさや俊敏さを補えると成功に近づくはず。これを見事な形でやってのけられるのが非Northern Dancer系であり、現在の日本競馬における最良の血であるＳＳ系なら文句なし。

スワーヴジョージの母ギーニョはトゥザヴィクトリーやサイレントディールの全妹で、甥にトゥザグローリー、トゥザワールド兄弟のいる良血。無駄なクロスを抑えてあるので順当にフェアリードールの特徴がでたHyperion的な粘りと渋とさで走る馬でストライドが伸びるような走法ではないので小回り向きだ。

函館1800mでの新馬戦はゲート一歩目こそモタついたが、二の脚で中団を確保し、折り合い良く道中を進め、直線で追い出されると力強いフットワークでＧ前できっちり差し切った。２歳時からそこそこのレベルにまとめてくる総合力の高い一族ではあるがスワーヴジョージのセンスも光った。奥を感じさせる初戦の内容から重賞Ｖへの期待大とみる。

◆洋芝御用達
08年、10年と過去２度の優勝馬を輩出しているネオユニヴァースの当地適性は侮れない。泥臭いネオにRoberto系×Danzig系の配合だったオールアズワンは体質が硬くて大成しなかったがHalo[3×5]のしなやかさと機動力が伝わったロジユニヴァースはダービー馬へと成長していった。

ミッキーユニバースは母父のラストタイクーン(Mill Reef)がナスキロ持ちで芝向きの柔らかさや素軽さが五代アウトの配合によって強調されているのがいい。新馬戦(新潟1800m)は重馬場ながら前半5Ｆ61秒6とまずまず緩みなく逃げてラストも11秒6-11秒3-12秒2と上がり勝負ではなかった点に小回りへの対応力を感じる。

秋華賞馬ブラックエンブレムの二番仔にあたるブライトエンブレムは配合的に気性の面で不安を抱えるがMr. Prospector[4×5]にRivermanのナスキロが効いているのでこれもネオが走るパターンとしては悪くない。潜在的に重賞でも通用する底力は秘めていそうだし、これも1600?2000mのＧ２、Ｇ３なら面白い素材。

フォワードカフェはStorm Cat×Danzig＋Secretariat[5×5]の肌にマンハッタンカフェなので母系の影響が押し出されたパワー型で半兄モズが09年の２着馬であることからも洋芝は大いに合いそう。大外枠から逃げ切った前走から控えても問題はないだろうし、４頭併せを豪快に交わし去り11秒台前半をマークした絶好の調教を買ってみたい。