新潟２歳Ｓ

２歳夏の重賞だから力関係が不透明なのは当然。新潟２歳ステークスが出世レースの側面を持つと言うならば大きなヒントは将来性からの逆算となるがハープスターやジャスタウェイなどの大駒だけでレースが成立する訳ではない。むしろこのレースでの成績が生涯最高の輝き的な馬の方が比率的には多い。それは軽いスピードだけの早熟馬だったり、パワーの血が主体の中距離馬あるいはダート馬だったり、区別は難しい。

今年に関しては地味な方のアプローチから攻めたい。このレースは結局のところ軽すぎるより奥が深すぎるくらいの《ステイヤー型》がちょうどいい。07年２着のシャランジュはNijinsky系のテンビー×コマンダーインチーフ。11年３着のクイーンアルタミラはバゴ×コマンダーインチーフ。これだけ重くても２歳戦ならスタミナ任せで追い込んで来られるのだ。ホワイトマズルやチーフベアハートが連対しているのも偶然ではない。

ディアコンチェルトの父サムライハートは日本競馬屈指の良血エアグルーヴの仔。自身の現役は５戦３勝だったがサンデーサイレンス×トニービン×ノーザンテーストを内包する血統は間違いなく一流。母父が第１回ドバイワールドカップ２着のソウルオブザマター。母母父もサドラーズウェルズ系のフレンチグローリーだからズブズブの血統でマイルが合いそうな血統ではないが当レースに限ってはこれくらい突飛な発想でいいはずだ。

叔父のナムラマース(父チーフベアハート)は京都の重賞でも連対があったし全く裏目だとは思えない。現に２戦連続の上がり最速を叩き出すなど早くも重厚な末脚の片鱗を覗かせている。新馬戦(福島1800m)は後方でちぐはぐな競馬だったが前走の新潟1600mでは前半引っ掛かりながらも直線で外に持ち出されると鋭伸。２着馬に並ばれてから盛り返す勝負根性もみせ、３着以下は４馬身置き去りにした。

前後半でラップの差が激しくなりやすい新潟にあって[前3F35.6-後3F34.6]は理想に近い。ハープスター、イスラボニータで決まった13年が[35.3-33.8]、12年が[35.1-34.6]、07年が[35.6-34.1]このあたりが新潟２歳ステークスにおける平均的なレースラップだけに前後半の差が小さければ小さいほどディアコンチェルトにはチャンス。高木厩舎はダービー３着マイネルフロストやラジオＮＩＫＫＥＩ賞を勝ったウインマーレライを管理するなど若駒の育成ノウハウに長けているのが頼もしい。

コスモピーコックの母系はモンジュー×Shirley HeightsにHigh Top[5×5]だから字面だけなら完全にステイヤー。ただ父系にMr. ProspectorとHaloの血を引くのが大きい。父のMediceanは1600と2000のＧ１を勝った長めマイラーだった。ダリア賞は内回りで直線ごちゃついて追い出しが遅れたぶん３着だったが新馬快勝を考えてもマイルに距離が伸びるのは好材料。外枠からスムーズならＶ機十分だ。

ブリクストのチチカステナンゴ×フジキセキは昨年実績を残した父同士の配合だから適性の高さは見逃せない。中京で上がり34秒4も新潟への対応を予感させる。不振の１枠に入ったのは痛いが長めをビシビシ追った中間の調整からも上積みは大きいだろう。

ホワイトマズル×サンデーサイレンスはアサクサキングスやシルポート、シャドウゲイト、シンゲンなど活躍馬を多数輩出している名配合。新馬は1200mだったハナモモも上がり最速で追い込み勝ちを決めたあたり一介の短距離馬ではないし折り合いがつけば一発の気配。

キングカメハメハ産駒のミュゼスルタン、ヒルノマレットはナスキロ増幅がないだけに重賞では一枚落ちの印象。完成度は高そうなだけにセンスでどこまで食い込めるか。オンファイア産駒のワキノヒビキは距離延長自体は問題ないが上位争いするならひと雨欲しい。

唯一のディープインパクト産駒として注目を集めているアヴニールマルシェは祖母がキョウエイマーチで半姉にサンブルエミューズ(フェアリーＳ３着)母父フレンチデピュティはカミノタサハラ、マウントシャスタ兄弟やウリウリと同じで一見華やかだが残念ながら大物感を削いで器用貧乏になりやすい。ただ結局はLyphard[4×4]の使い方にいつ気付けるか。差す競馬では限界がある。