ヒダリテマエ、ミギテマエ…

94年秋、東京競馬場。
ボロのコートをまとったじいさんが
半狂乱になりながらパドックを眺めていた。

じーさんは猫背で、柵にしがみつき、
ブルブル体を震わせて、
なんか今にも死にそうな振る舞いなので、
周辺にいた客は後ろ指を指したりして笑っていたりする。

目に余り、後ろから新聞をちらっと覗いてみると、
普通は体重の増減でも書いてるようなところに
ヒダリテマエ、ミギテマエ…と赤で書かれている。
成績欄に落書きはなかったから
ケントク買いをやってるわけでもなさそうだった。

で、そこで思い出した。
たしか事前にギャロップかどっかの雑誌に
騎手のインタビューか何かで
左手前や右手前のままで走る影響や考察みたいなのが
書かれていたのがあったのだった。
だとすると、このじーさんは
記者が騎手に媚びただけのインタビューを
真に受けてしまったんだろうか？
そしてそれを、ない知識や頭で無理に考えすぎて
頭がおかしくなってしまったんだろうか？

…色々考えてたら、
悔しさと怒りみたいなものばかりが
自分の中に湧き上がっていた。
そしてその頃から中央があまり好きじゃなくなったのは
言うまでもない。
（南関はさらに情報不足＆永遠の2分前があるからもっと嫌いだったけど）