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2019/06/27 09:17

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      ◆

 まず最初に言っておくことというのは、田中さんとは、付き合ってもないし、会っても居ません。
ということです。
――えぇ、お見合い、断りましたよね。


――でも、私には、連絡が来ていたよ?
遊びに行くだの、行っただのとね。


――あぁ、それは、嘘ですよ。

――嘘?

――なんでも、
『私の姿を、
自分にしか晒したくなかった』
とかで、あの彼と一緒ですね。 独占欲がありすぎるがゆえに、私は、何一つ自我を持てなかった。

――断っても、一方的にかい?田中さんからはよく聞かされていたのに。

――えぇ。おかしいでしょう、私に愛想どころか、感情なんてものが欠けているのに『楽しむ』が頻発したらおかしい。

――欠けてるねえ、言われてみれば、そうかもしれないね。
それでも恋をすれば楽しく食事したり、遊園地ではしゃいだりするのかと、人は変わると思ったもんだが。


――人は簡単には変わりません。何かするたびに、過去にしばられる、その過去に寄り添うことで、どうにか前を向くようになる。マエノスベテは、私から自我そのものを取り上げました。
自我がないと、心は組み立ちません。そして自我は、心よりも厄介な仕組みです。
だから今は治しようがないのです。

――嘘、じゃあ、新たに紹介したって良かったわけだね。

――「うそうそ、あなたには田中さんが居るからね!」
とみんなの前で言われたとき、私はどうしようかと焦りました。冗談にしても、冗談じゃない。

――え、でも、また、仲良くしてやってよ?
また話し合えばいいと思うわよ。田中さんいい人だし。

――……………………。


他人と、仲良く談笑、がどういったものなのか、
どういったものが仲なのか、
好意で痛め付けられる場合もある中、その恐怖を理解している中、


――その台詞は、禁物ですよ。

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