184件のひとこと日記があります。
2019/06/27 09:17
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まず最初に言っておくことというのは、田中さんとは、付き合ってもないし、会っても居ません。
ということです。
――えぇ、お見合い、断りましたよね。
――でも、私には、連絡が来ていたよ?
遊びに行くだの、行っただのとね。
――あぁ、それは、嘘ですよ。
――嘘?
――なんでも、
『私の姿を、
自分にしか晒したくなかった』
とかで、あの彼と一緒ですね。 独占欲がありすぎるがゆえに、私は、何一つ自我を持てなかった。
――断っても、一方的にかい?田中さんからはよく聞かされていたのに。
――えぇ。おかしいでしょう、私に愛想どころか、感情なんてものが欠けているのに『楽しむ』が頻発したらおかしい。
――欠けてるねえ、言われてみれば、そうかもしれないね。
それでも恋をすれば楽しく食事したり、遊園地ではしゃいだりするのかと、人は変わると思ったもんだが。
――人は簡単には変わりません。何かするたびに、過去にしばられる、その過去に寄り添うことで、どうにか前を向くようになる。マエノスベテは、私から自我そのものを取り上げました。
自我がないと、心は組み立ちません。そして自我は、心よりも厄介な仕組みです。
だから今は治しようがないのです。
――嘘、じゃあ、新たに紹介したって良かったわけだね。
――「うそうそ、あなたには田中さんが居るからね!」
とみんなの前で言われたとき、私はどうしようかと焦りました。冗談にしても、冗談じゃない。
――え、でも、また、仲良くしてやってよ?
また話し合えばいいと思うわよ。田中さんいい人だし。
――……………………。
他人と、仲良く談笑、がどういったものなのか、
どういったものが仲なのか、
好意で痛め付けられる場合もある中、その恐怖を理解している中、
――その台詞は、禁物ですよ。