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2019/06/24 10:56

98

 つきまとうならカメラを起動してみようかと彼が携帯を出して見る。電源が入るとたん、付きまとう歩行者は一斉に自分のスマホを見た。
このタイミングの良さ!
間違いなく、これは、なにかしらの情報を共有している。

「社長がさー」

「俺も、具体的には聞いてないんだよな、こうしろってだけで」

時折、若者の口からは、たびたび社長という言葉がこぼれていた。ぼくたちは人を巻きやすい場所を求めて一旦あちこち走り回った。

携帯は電源を一旦切るしかない。
こんなのが毎日続くと、ぱったりと音信不通になってしまうのでかなり不思議な人物になってしまいそうだが――

「社長?」

ぼくが隣にいる彼女に確認をとると、彼女は苦笑いのような半泣きのような表情で言う。

「はぁ、私も、よくは知らないんですが、マエノスベテは、社長だそうで」

「どんな会社だ、うわっ」

三人、走り回っていた途中、緑川☆印刷のトラックがぼくらの前方、狭い路地でわざわざ横にとまる。

「塞がれた!」

彼が叫ぶ。ぼくらはどうにか引き返すとまた走り出す。
なんだ、これ、どうなっているんだ?困惑するなかで脳裏に浮かぶものがあった。

「あの男。

SNSの――アイコンがあった。待ち受けに。Twitterのものだった」

最近SNSでいろんな事件があったとニュースになっていたばかりだ。半グレ集団が、SNSで集会を呼び掛ける話や、麻薬を売る人が、販売を持ちかける話、自殺志願者を募る話。

「確かにSNSで、僕らについて共有していた可能性はあるな」

「近くに交番がある。そばを通ろう」

ぼくと彼はそう言い合った。
彼女が「あの男?」という顔をしていたが今は説明する場合じゃない。此処は戦場だ。

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