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2019/06/17 22:06

85

「パイの実食べません?」

「…………あー」

「あぁ、箱? 幼馴染みのリス君二人がパイの実の森に居る絵です。パッケージ変わったんですよね」

「……うん」

なんて会話をしている横にそーっと近づく。彼は、困惑が隠せないようではあったが思っていたよりは冷静そうだった。

「彼氏はいいのかな?」

彼女は、あははーと笑う。
手には紙コップを持っていた。自販機のジュースを買ったらしい。
「…………」

彼は、少し何か思案した。
それからまた、固まったまま、思案していた。

――なんだか様子が大丈夫そうに見えたので、要らない心配なら下へ降りて彼女を探すことにしようかと背を向けたときだった。


「ふざけるな。この僕が――騙されると思ったのか?」


冷ややかに笑うそんな声がした。彼だ。

「生憎、きみと馴れ合う気はないんでね」

女性には比較的紳士で優しい方であるはずの彼が今日は不機嫌なので、なんだかぞわぞわと落ち着かない心地だった。
やがて彼は、ついぼんやり足を止めてしまったぼくに、急に呼び掛けてきた。

「そいつを捕まえろ!」

「えぇー」

 彼女はばたばたと、彼から逃げて、こちらに向かってくる。
ぼくはしばらく迷ったが、腕を広げて、簡易なバリケードになる。
待てよ打ち合わせと違うじゃないかなどとぼやく場合ではなかった。
捕まえろと言われればそうするしかない。やがてぼくと彼は、その人物を挟み撃ちで確保した。

      □


 華奢な身体とは裏腹に、足は骨がゴツゴツと角張った印象を与えていた女は、喉仏を震わせながら、「う、わぁああ……」と嗚咽を溢す。

「なんで、バレたんだ、俺の、メイクは、完璧だったのに、あいつ、約束が違うじゃないか!!」
「メイクはいいんだけどね……」
彼は、呆然とするぼくをよそに、ため息を吐く。彼は彼で、女の子みたいなカッコウなので、突っ込みどころがあるが、今はやめとこう。

「骨格は変わらないし、変えられるにしても、きみは決定的な部分が、欠けてたよ」

「チクショー!! 裏切ったな!! お前がやれって言ったんだぞキンパツ野郎! あああああー! なんて惨め、辱しめだ!! 俺の金はどうなる!?」

「ふむ、やはり、金を渡す約束で、女のフリなんかさせられてたか」

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