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2019/06/15 17:26
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やがてぼくの友人は、それからすぐ注文が来たというのに、立ち上がった。そして「映画館に落とし物をしたらしい!」
と、向かって行ってしまった。すぐ帰るから座っててくれと言われて彼を二人で待つことに。まぁ、映画館はすぐ上だ。迷ったりもしものことは、そうないだろう。根拠無く、そう信じた。
ぼくはそうして再び二人になったという気まずさを和らげることに苦心した。
彼女になにか気の利いたことが言えると良いのだが、残念ながらそういった経験には疎いため、ただ曖昧な笑みを浮かべ、ははっ、とギリギリの愛想で関わるくらいしかできなかったが、それでもなんとか、そこそこの距離を築けている気がした。
会話に困ってしまうが、変にペラペラ話しかける軟派な奴と思われるのも困る。
そうだ、こうしてのんびりと誰かを待っているときの定番ホームズとワトソンごっこでもしようかと、それにちょうどいい観察対象を探していると、(ちなみにホームズは途中までしか読んでいない)彼女の方から話しかけてきた。
「今日は……朝から、ありがとうございます」
「あー、えっと、はい」
何がはいなのかもわからないが、何がありがとうなのかもよくわからず曖昧に返す。
「私、あの生活が続いてたある日、限界が来て。もう来ないでほしいと言い、そのために、好きな相手が居るからと――言ったんです」
「居るんですか?」
「どう思いますか?」
ふふ、と彼女は少し儚く笑った。
「幸せになれますよ、次は」
直接、肯定も否定も具体的な話もしなかったが、彼女はその意図を組んでくれたらしい、さっきよりも楽しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます」
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