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2019/06/11 13:18

71

 そんな風にしてルートを辿ったぼくらはどうにか追っ手を巻いてから、スーパーに隣接する映画館に向かった。

「しっかし、デートね……」

人を好きになる気持ちがわからないぼくには理解しがたい。
一緒に出掛けてなにが面白いんだろうか。
映画くらい一人でも見られる。家で「あの子」の横にずっと座って本を読んでいるだけでさえ、いっぱいいっぱいなのだから、予測の付かない、こんな、広場に出掛けたらそれこそ感情のやり場に困って、おかしくなりそうだ。

「彼女は、こういうこと、あまり好きな風に見えないけど……」

「そう。だからさ、解決のために、来てもらったんだ。
これは、彼女を一度あの家から離すため」

彼が冷静に答える。
あ。なんだ、そういう打ち合わせか。

「まぁ、きみと居るだけでも、既に誤解が危なそうだけど」

彼は髪が長くあと顔立ちも、睫毛が長くてしゅっとしており服装も袴みたいなスカートみたいなのをよく着ているので、一見性別を見まがうのだが、人嫌いのぼくとつるんでいる理由も、少し、近い部分がある。
まあワケがあるというやつだ。
「誤解はある意味じゃ救いにもなる、だろ?」

「まあ、そういうことだけど、ね」
お互い、他人を寄せ付けるのがめんどくさいからこそ、こうして気が合い、それらしくつるんでいる。
彼も肩をすくめる。
「でも、今は、作戦の邪魔になるかもな」

ぼくは彼を無視してため息を吐く。

「はぁーあ。第二次世界対戦前は、見合い結婚が主流だったらしいのに、何をどう間違ったのか」

ワケがあって『自由な意思』自体が破壊、崩壊寸前なぼくには今の社会はとても難儀する。
何を感じて、何を行動するのか、受け入れられないのだ。

昭和20年代には見合いが七割だったらしい。その辺りは保守したってよかったんじゃなかろうか。
今さら言っても、無駄だけどね。
「コスパとかいう問題じゃないんだよなぁ、これ。ドット画面から、急に画質のいい3Dゲームになって世界観が急に掴むの時間かかるようになったくらい、
そう容易い話じゃないってのに、理解できないやつらが哀れだよ。電源つけただけで、すぐ動けると思ってんのかね。こっちはどこまでが風景で、どこまでが移動マップなのかもわかりづらいんだよな」

「その例えもわからない人にはわからないぞ」

「うー、なんか、飲み物買おうぜ」

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