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2019/06/08 10:46

68

 電話が終わってからも彼は夜までに帰れるだろうか、と改めて心配していた。


 ――安心して欲しい、このときの話は語るとそんなに長くはない。
 ぼくは今現在進行形で誰からも相手にされないので、書くのは気楽に書いていられるし、これをネタにしようものならそれこそ作家は捕まるだろうけれど。そう、ぼくは今こうして書いている。
作家が嫌いだからこそ自らの手によって。読むのは苦手だし多数の著書に興味などないのだから物語にはならないかもしれないが、チラシの裏くらいの気晴らしにはなるといいなと思う。
 一部作家と違い、他人の存在をネタ探しに無理矢理利用しなきゃできないよりはほとんどの影響は日常生活に受けているところが違いだから、「作品」風に整わない部分があるかもしれないことは先に記しておく。
残念だが商品にするために媚び媚び整えたものではないからだ。



「彼女は、無事外に出られそうらしい。映画館にどうにか時間通りにこられるようにすると言っていたよ」

彼が携帯を閉じて、苦笑いをし、ぼくは、そりゃよかったと答え、そのあとも二人、いろいろと会話をしつつ歩いた。
やがて少し進んだ後、無事巻いたらしい背後を見る。

「よし今のところは、ここに彼らはいないな」
と、確かめて安堵する。

『彼ら』は、よほどでなければ、店や住宅街の敷地には入ることができないのだ。
目立ってしまうし、なにより、迷惑だからなのだろうか。
車は、幅の問題もあるがとにかくこんな風に、マンションや店があちこちにある狭い路地はなかなか追えない。

追われてはいても、安全な場所が完全にゼロではないのだった。

「まぁ、バイト歩行兵が居るようだけどね」

彼が、ぼくの肩を小さくつつく。何かを見はる人の目は、通常の人の眼よりも静止時間が長い。店の中には居るだろうし、それから……
マンションの影から人が歩いてくるかもしれない。
車が入りにくい場所、または、入っても逆に相手が不利になるだけの場所をうまく通らなくてはならない。

「ただ出掛けるだけで、こんなに労力を使う日が来るなんて。散歩が日課の小さい頃はまさか思いもしなかったよ」

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