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2019/05/31 21:30

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 帰るときには昼らしく太陽が天に登り始めていた。
廊下にいる女神に少し惜しいような、また再会したいような気持ちになりながらもなるべくそちらを見ないように務める。
挨拶をしてドアのを開くと、ふんわりと涼しい風が身体に吹き付けた。

「なぁ、急にデートの約束なんかしてどうしたんだ、軟派な性格と思ってなかったけど。まあ楽しんで来てくれよ」


 帽子の位置を確認しながら、ぼくが言うと彼は真顔のまま、きみも来るんだよと言う。

「あれは、ウシさんの前では言葉に出さない形で示し合わせただけなんだ。これから、どうにか夜までに帰るべく、行程を短縮するからね」

「短縮? 短縮って」


「そうだ今から、ラーメンを食べに行こうか」

「おい」


行き先のラーメン屋として示されたのは近所にある……『あの写真の』、つまりマエノスベテと女性が撮られた店だ。

「ちらりとしか見えなかったが、ラーメン屋の横、替え玉無料キャンペーンの幟(のぼり)があったんだ。先週までだったらしいよ」

「なんだって、今行っても、替え玉は無料じゃないじゃないか!」
ぐにー、と頬を引っ張られる。
「そうじゃない、日付の特定だよ。この写真は恐らくウシさんが撮ったものではないからね。だとしても理由としてあんな罵倒を浴びせられる立場は得ているというわけだ。写真を撮っていないとなると背後が浮かび上がりやすくなるからな」

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