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2019/05/01 18:49

38

「にしてもさっきは何かあったのかしら? パトカーがすごい勢いで走っていったけれど。ナエごん気になっちゃう」

「あぁ……『彼』が来ていて」

「なーるほど」

彼女は少し事情を知っているらしくぽん、と手を打った。

「『彼』は困ったものよね、どの人間も自分と同じような仕組みの生物だと本気で思ってるんだから」

くまちゃんは、その腕の中で、ぼそっと「甘いにおいだな」と呟いた。どういう仕組みかは謎だがこのぬいぐるみは、まれに喋る。
「好意が『吸収してしまいたい』という意味なのかもね。ほら、昔の画家とかにも居なかったっけ? 周りを養分みたいに吸収することを好意と呼ぶ人が」

確かに、なんだか居た気がする。隣に居る彼は詳しいだろうかと見上げると、彼は彼で何か考え込んでいるようだった。
いや……考えてるのだろうか?ぼんやりとどこかを見たまま固まっていた。

「互いに良い影響を及ぼす存在になるというのは、そういった意味だと貴方たちかな?」

 ふいに、こちらに話を振られてどうでしょうかねと微妙な返事をしてしまった。
ぼくたちはなにか影響されたりしたりしてるだろうか。あまり意識したことがないように思う。
「影響は影響、結果が結果、僕はそう思うな」

彼は彼でなにやら撹乱するようなことを言った。

「なにか甘い物を食べたの?」

 ナエさんはふと思い出したようにぼくらに聞いた。
ぼくは「食べた」と素直に答えた。『彼女』はまだケーキがあるけどと台所へ向かっていき『彼』もあとに続く。

ぼくがついて行こうとしたときナエさんとすれ違った。
耳打ち。

「ナエごんじゃなくて、ぬいぐるみに話すんだ?」

――え?

「きみって、なかなかいい耳してるね」

慌てて、帽子ごと頭を押さえる。大丈夫脱げていない。

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