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2019/04/25 00:06

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『俺と話せ! いいな!』

帰宅しようとする間も、彼は、ウワキダ、フリンカ、フリンダと思っている私に対して強引に肩を掴み何度も頷かせようとした。
私は、はい、と言えなかった。
というのも、その頃にはもう、一体どんな性格で居れば、ウワキダ、フリンカ、フリンダと、私の見分けが付くのか、検討がつかなくなっていたから。
陰気に、うつむいていることだけが、彼が私に認めたことだからでもあった。ただ……

『なぜ笑わないんだ!』

道を歩いている際周りが、その暗さに疑問を持つと急に彼は焦って、笑うのを頼んだ。
明るく笑うと、またウワキダ、フリンカ、フリンダが出てきてしまうので、私は首を横に振るしかないのだった。

『笑顔が、見たいんだよ、幸せになってほしいんだ』

私が身を固めているうちに彼はそんなことを言ってまで意思を変えさせようと躍起になった。
『話せ! 笑うんだ!』


「いくらそう言われても笑えば最後。『ウワキダ!』と叫んだ彼がすかさず私を殴り付けるという恐怖に洗脳されていましたし、出会った辺りからすっかりその暗示にかかっていました。

耳元で低い声が今も
『フリン! フリンカー!』と、聞こえてくるようです。

ガタガタ震えて耳を塞ぎ、私は、絶対に笑わない、声も出さない、とその際心のなかで誓いました。
感情が出ては負けなのです。
彼は感情全てを、ウワキダやフリンカの性格に当てはめてしまう。他の他人は見て居ません。
叫びました。声にならない声で私は、ウワキダやフリンカ、フリンダを知りません、もう許してください、他人とふれあってはならないのですか、
何もなく笑うことなどできやしない!


 そこまで言って、彼女は一息置いて、まず茶を飲んだ。
ぼくは、ケーキの美味さとは別に、彼女に降りかかるあまりの出来事にさらに驚いていた。
あらゆる接触の機会を遮断しながら、笑顔を見せろ、話せ、というのは無茶な話だった。
面白いこともなく、ただプライドによって感情を強引に変えることが出来るのは、生きた人間にする行為ではない。

 彼はもしくは生き物と暮らしたことがないのだろうか。
思考実験でよく話にあがるメアリーの部屋を思い出した。
あれは『色』の定義からまず成り立たせる環境が確定していないなど様々な部分があるけれど。
 感情を発散させる場を持たない、許されない人間が、感情を見せることを試されたとき。
 急な強要により精神が崩壊しても不思議ではない。

「それは、確かに彼がおかしいと思います」

 何も見えず何も聞けない毎日と暴力を与えながら表では笑え、なにか言えと言われても、殴られる恐怖しか頭にないのは明らかだ。

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  • リンダ
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