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2019/04/23 19:04
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・・・
「ケーキ、美味しいです」
どうにか絞り出した声に、《彼女》は「そう、よかったです」と答えたがなんだか顔色が悪そうだった。
「どうかなさいましたか?」
聞いてみるが、ただ、あぁ……とぼんやりした呻きを上げている。
「私が、悪い、私が話すから私が、私が、フリンカ、フリンダ、私は、ウワキダ、フリンカ、フリンダ……」
何かの呪文だろうか?
それにしたって聞きなれない
羅列だったので、意図が伝わらなかった。
彼女は、そうしているあいだにも目の前でどんどん青ざめていく。
「あぁ! フリンカフリンダ、ウワキダ、フリンカ、フリンダウワキダ、あぁ!」
「あの」
ぼくは慌てた。
彼を呼べばいいのか、なにか処置が必要か電話で何処かに連絡すべきか、一時的な錯乱ならよいのだが。
「スベテは、俺のだ! フリンカ! フリンカ、スベテは俺のなんだ!」
人の名前だろうか?
明確な発音がわからなかったが、そんな響きがあった。
「マエノス・ベテは、俺だと……彼は、マエノス・ベテという名前で呼びます、だから」
テーブルから離れてしゃがみこんだ彼女に、せめて多少の意識が戻らないかとぼくは呼び掛けた。彼女はしばらくして、はっと我に返り泣き出した。
そして少し泣きやむと、呟くように言った。
「大丈夫です、ごめんなさい、少し話をしますが良いでしょうか?」
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