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2019/02/14 20:20

紅茶のみたい

紅茶のみたい


 甘い紅茶は邪道だ、市販ドリンクは甘すぎると昔はどこかで思っていた。
今では普通に午後ティーを買い、紅茶花伝を買う。大人になると甘いものが欲しくなるのかもしれない。

「私たちは評価をもらってるの!」

 耳にまとわりつく音。卒業した先輩がたしかそんなことを言っていた。 評価ではない、感性のふれあいを求めて私はこうして一人で絵を描いている。

電気をつけない。
影が変わるから。
足元には小さなストーブ。
小さな缶の中身、あったか〜い、のミルクティは下の自販機で買ってきてだいぶ生ぬるくなった。簡易的な水張りをしながら、白い息を吐く。

制服はあまり防寒用じゃないなと、冬は特に思う。
「評価、か……」

考えてみてもわからなかった。コンクールに選ばれないからといってそれがゴミになるなんて考えを持つのが恐ろしかった。
 練習や、頑張りの結晶を、○か×で決めないでほしいのに、大人になってここを出れば、みんながどちらかでしか私を見ない。

私の価値が決まる。


筆を手にしたまま、無意味に水で白をなぞった。
 だけど……
あの印象操作から逃げたくて、昔の芸術家たちも策を凝らしている。
そして数年経って謎が解け褒められる。
私は変わらないよ、と、彼らは伝えているじゃないか。私も、変わらない。そんな絵で居たかった。

 駅前に卒業生のポスターが貼られている。
あれ、私の絵だ。

「私たちは評価をもらってるの!」

朝の出来事が、頭を埋め尽くす。
先輩は私と同じく駅前にいたけれど、電車に乗る前に指をさして、睨んだ。

「あんたなんかと違う」
「遊びじゃないんだから」
これは、遊びじゃないっていうの。
生まれるたびに、私はなくなっていく。
感性も、生きていた証しも、削られていく。


 評価さえあれば、世界は変わっていく。
犯罪だってなんだって許される。
あのポスターは複製品。私、じゃない。


「なんかあれ、ダサいよね」
「そう? 私はいいと思うけど」

道を通り過ぎる人たちが、評価をくだしていく。
 私じゃない形になったそれは、もう○か×だった。
既に私の価値は、決まっている。
評価をもらっているのに手には何もない。
卒業しても、何もない。私はただ、白かっただけなのだろうか。

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    2019/02/14 23:03 ブロック