94件のひとこと日記があります。
2019/05/06 22:34
卯の花 霍公鳥
卯の花とホトトギスは、初夏を告げる象徴として古くから親しまれ、今年旬(?)の万葉集には、ホトトギス(万葉集では、「霍公鳥」の表記)を詠んだ歌が125首。卯の花を詠んだ歌が24首あります。卯の花の24首のほとんどは、「霍公鳥」と一緒に詠まれています。
次のような歌があります。
霍公鳥来鳴き響もす卯の花の共にや来しと問はましものを
ほととぎす きなきとよもす うのはなの ともにやこしと とはましものを
万葉集 巻八(一四七二) 石上堅魚(いそのかみのかつを)
石上堅魚は、磯野カツオと関係があるのかないのかはわかりませんが、平安時代の役人さん。さかのぼれば物部氏といわれます。父親とされるは石上麻呂は、『竹取物語』でかぐやに求婚する一人「石上まろたり」のモデルであるとされています。竹取の石上まろたりは、「燕の子安貝を取ってきて!」と言われ、取れたのだけれど、落下事故がありそれがもとで亡くなるという何ともお気の毒な方です。でも、5人の男性のうち、元祖ツンデレかぐやが同情するただひとりの男性ですね。
この歌は、「梅の宴」の大伴旅人の奥様の大伴郎女が大宰府で病気のために亡くなった際、都から弔問のため派遣された、石上堅魚が詠んだとされています。
霍公鳥がやって来て鳴いてるね 卯の花とともにやって来たのかい と聞いてみたいなあ
といったような意味で、抒情歌ともとれます。
あるいは
初夏を告げる「セット」である、卯の花と霍公鳥を大伴夫婦になぞらえ
霍公鳥(夫人)は、卯の花(旅人)と一緒じゃないの? どうしていないの? 聞いてみたいよ!
と詠んだというようにもとれます。
卯の花と霍公鳥は一組の景物なのだけど、妻を失くして一人寂しくいる旅人の心を慮って詠ったものかもしれません。