似て非なるもの。

ブリーダーズカップも終わって海外競馬のビッグイベントも一段落ですね。

昨年BCに遠征したエスポワールシチーがみやこSでようやく復調した姿を見せました。ここまで復調に手間取ったのは、やはりBCクラシックが極めて厳しい戦いだったせいだと思います。BCクラシックに限らずアメリカのダート競馬というのは日本のダート競馬とは全く異質なもの。ここではアメリカと日本の代表的なダート10ハロン（2000m）戦のラップを見比べて、その違いを考える参考にしていただこうかと思います。まずはアメリカ競馬から。

ブリーダーズカップクラシック（2011）
23.61-24.23-24.98-25.45-26.00（2分4秒27）

逃げた Game On Dude が2着に粘っていますが、流れとしてはアメリカダートの典型的な前のめり。勝った Drosselmeyer も3着の Ruler On Ice も追い込んできましたが、この2頭はこの2年のベルモントS勝馬。12Fで勝つスタミナの裏付けが生きたという事でしょう。

ブリーダーズカップクラシック（2010）
23.24-23.90-23.87-26.11-25.16（2分2秒28）

前6Fのラップが狂気の沙汰。最後の2Fでラップが速くなっているのは追い込んだ Blame と Zenyatta が如何に化物かという話ですが、日本で言うと1992年の天皇賞・秋みたいなズブズブ展開。4角で果敢に先頭に立ったエスポワールシチーはいわばダイタクヘリオス状態、よく頑張ったというべきです。

サンタアニタハンディキャップ（2011）
22.95-23.78-24.00-24.07-24.67（1分59秒47）

来年BCが行われるサンタアニタの10F戦。チャーチルダウンズに比べて非常に馬場が速いので比較しづらいですが、ラップ的には綺麗な前のめり。多少速くても緩急少なく惰性でゴールまで保たせる競馬が、勝った Game On Dude にとってはうってつけなのが判りますね。

ジョッキークラブゴールドカップ（2011）
24.17-24.39-24.10-24.36-25.88（2分3秒17）

こちらはベルモント競馬場の10F戦、馬場が大きいので１コーナー過ぎからスタートの3/4周。出走馬の顔ぶれのせいもあってか、G1クラスとしてはゆったり目の平均ペースです。というか、この波のないラップはアメリカではスローと言っても差し支えありませんので念の為。ここでは3番手から抜けた Flat Out でしたが、BCクラシックでは前に付いていった分終いジリジリでした。

日本からはスマートファルコンが逃げきった2つのレースを。

東京大賞典（2010）
23.20-23.70-24.00-24.40-25.00（2分0秒4）

JBCクラシック（2011）
24.40-24.50-23.80-24.40-25.00（2分2秒1）

東京大賞典のラップはサンタアニタHと共通性がありますし、今年のJBCはジョッキークラブGCと似たようなラップ。スマートファルコンの強さはこのアメリカ的な競馬の仕方にあると言えそうです。馬場の違いを克服できればアメリカでもある程度やれそうですが、こればっかりは実際に行ってみないとなぁ。

ちなみに日本の典型的ダート競馬の例としてこちらを。

シリウスステークス（2011）
23.80-24.80-26.30-24.90-24.50（2分4秒3）

みんなでスタミナ温存してヨーイドンという、アメリカのダート戦とは似ても似つかない別物。こういう競馬での優劣は、能力の限界を競ってのものとは言えないでしょう。もちろん馬にとってはこっちの方が優しいのでしょうが、優れた能力を後世に伝えるという意味ではあまり意味を成さないのも確かでしょう。

アメリカのダート一線級で活躍した種牡馬は芝でもダートでも活躍馬を出しますが、それはスピード持久性という我慢比べを勝ち抜いている以上当然ですね。日本のダート競馬にはそんな我慢比べの要素が少なく、結果種牡馬として成功するレベルに達さないという悪循環がある気がしてなりません。

皆さんはどう思いますか？