後輩が先輩に　先輩が後輩に

コンコンコンっ



私
「はーい。誰だろう・・・」


ドゥラ
「ななさん、こんにちは。あの、お邪魔してもいいですか？」


私
「きっ・・貴様ああああ！またダーを笑い者にしに来やがったなあああ！！！」


ドゥラ
「そんなそんな・・違うんです。僕・・現役引退する事になったのでご挨拶に・・」


私
「えっ・・・」


ドゥラ
「いやあ・・なんて言うか・・こんなに早く父親業に転職なんて思いもしませんでしたよ。

僕自身もまだまだこれからだって、これから大きなレースをどんどん勝って、

海外でも勝ってって・・。

まあでも、もうキツイ練習しなくていいのかなぁ？って考えると嬉しいですけどね（笑）」



私
「・・・なにそれ。本気でそんな事言ってんの？アンタ、他の競走馬をバカにしてんの？

たった1勝に届かない競走馬がたくさんいるってのに。

みんなが欲しくて欲しくて仕方ない栄冠を持ってんのに。見損なったわ！

だからアンタなんて最初っからキライだったのよ！！！」



ドゥラ
「やだなあ・・ななさん。そんな熱くなっちゃって・・

お、落ち・・落ち着いて・・ください・・よ・・・っっ」


私
「・・・ドゥラっち？」


ドゥラ
「ほっ・・本当はっ、僕だってめちゃくちゃ悔しいんですからっ・・

ぼ、僕はっ、こんなところで終わるような競走馬じゃないんですよっ。

もっと走りたい・・・もっと勝ちたい・・・こんな志半ばで・・こんなっっ・・・くっ」


私
「泣きたい時は泣きな。オトコだって泣いていいんだよ」


ドゥラ
「・・・っ、く、悔しいよお！悔しい！悔しい！ううっうわああん・・・」





予後不良を免れただけでも・・・

種牡馬として偉大な産駒を・・・

様々な意見がありますが、どれも人間の思い。

私はドゥラっち自身がどう感じているのかばかり思ってしまいます。

もし私が彼自身ならきっとこう感じるだろうなと思いました。


お粗末な言い方になってしまいますが

思いもしなかったあっけない幕切れに純粋にショックです・・・

皆さんも同じではないでしょうか。


いつも思うんですけどね。

種馬クンや繁殖チャン、乗用馬さんになっても愛されるのって

わざわざ北海道等の馬産地に会いに行っちゃうのって

わざわざ乗馬クラブの会員になっちゃうのって

いい仔を輩出するのもそうですが

純粋に会いたいって気持ちもですが


現役時代に走っている姿を観て感動したりファンになったりするからですよね。

1番って走っている姿・・・ですよね？

その姿に心を動かされたからですよね？


また私・・・甘ちゃんな事言ってますね。

競馬なんだ、競馬の世界なんだから。勝負の世界なんだから・・・・。







私
「あっ、あのさドゥラっち。

この先さ、も、もしもだよ？

ダーが父親業に転職してさ。もしもドゥラっちと同じ繋養先になったらさ・・

ダーと仲良くしてください！いじめないで下さい！お願いします！

先輩お父ちゃんとして後輩お父ちゃんダーと仲良くしてあげてねっ！！」




ドゥラ
「・・ワンオン先輩ってコッチ（種馬）来られるんですかね？」




私
「きっ・・貴様あああああああ！やっぱキライじゃあああああ！！！！！！」