Memories of Buena Vista (3)

もう届かない！ 誰もがそう思った…
だけど彼女だけは諦めていなかったんだ…

2010年 有馬記念

年末恒例、言わずと知れた競馬の祭典。一頭の牝馬がそのプライドを取り戻すべく三度、関東遠征を敢行してきた。その馬の名はブエナビスタ…

ジャパンカップでの降着劇
因縁の相手、ローズキングダムは疝痛による直前回避。決着をつけようと意気込む陣営の気勢は一度は削がれかけた。
ただそれでも元々層の厚い3歳牡馬勢
ヴィクトワールピサ、ペルーサ、エイシンフラッシュに加え遅れてきた超良血馬、ルーラーシップ、トゥザグローリーが加わり空前のブエナ包囲網を敷く。

元来、中山2500mはロベルト系が一世を風靡したように先行ができ、小回り上手な馬が有利とされる。ブエナにとってはやや不得手なコース形態と思われた。
ただ松田師は「頂点に立とうとする馬が距離だのコースだの、細かい事をいちいち気にするか？」と不安を一笑に付し絶対の自信とブエナへの信頼を口にした。

レースは若武者、三浦がトーセンジョーダンと共に思い切った逃げを打つ。トゥザグローリー、ペルーサ、ヴィクトワールピサ等が後に続き、やがてスローな流れに落とす。ブエナは7番枠からスタートするとやや下げる形で終始後方集団内で脚をためる形。
スミヨン自身は先の降着により
「騎乗が強引すぎる、勝てたレースを落とした」等の批判を浴びた事で、いつもより慎重なレース運びを余儀なくされていた。

3コーナーを過ぎる辺りで一気に
先行勢が激しくスパート。
ピサ、ジョーダン、ルーラーシップが前を行く。流れは完全に前残りのスタミナ勝負！
中山競馬場に漏れる深い溜め息…
単勝1.7倍の断然の支持を得たブエナはまだ中段ようやく外に持ち出した所。もうダメだ！初めての惨敗を覚悟した。

だが彼女だけは諦めない。スミヨンの鞭に応え ただ一頭、異次元の末脚(33.8)を繰り出し大きく抜け出したピサを追う。
一完歩毎に縮まるその差。沸き上がる悲鳴ににも似た大歓声…

内と外、その鼻面が並んだところがゴール。
スミヨンとM.デムーロ世界の名手2人が思わず顔を見合わせる。意地と意地がぶつかり合った空前の名勝負が幕を閉じた。

その着差 僅かに2cm…

2010年、秋の古馬3冠ロード

悔しさばかりが強い印象として残った方も多いと思う。でも今振り返るとブエナビスタが最も充実していた時期、最も強かった時期であることは間違いなくこの3戦で彼女の凄みを十二分に堪能する事ができたのではないか。

華奢な牝馬が古馬3冠ロードに果敢に挑戦し他のどの馬よりも鮮烈な印象を残す。異なる距離、異なるコース、短期間に3度に渡る関東遠征…
その精神力！身躯の強さ！

そして最後に得た大きな勲章

☆2010年 年度代表馬☆の栄冠

自信を持つ事、諦めない事、常に全力で立ち向かう事の大切さを教えてくれたブエナ、忘れ得ぬ想いを永遠のものとし皆さんと共有出来ればと思い、日記に残してみました…
長々とお付き合い頂き有難うございました。(完)